中古マンション売却の減価償却費の計算方法をわかりやすく解説
築25年の中古マンションを売却する契約がまとまり、仲介会社から提示された売却価格を見て安心したあとで確定申告の案内を読むと、「減価償却費」という聞き慣れない項目が計算欄に並んでいます。
中古マンションの減価償却費は、建物の購入価格に法定耐用年数ごとの償却率を掛けて算出し、取得費から差し引くことで譲渡所得の額を決める数字です。鉄筋コンクリート造のマンションなら償却率は0.015で、保有期間(購入から売却までの経過年数)が長いほど減価償却費が大きくなり、譲渡所得は増える方向に働きます(2026年9月時点)。
本記事では、中古マンションの減価償却費の計算方法と、売却益にかかる税金・使える特例・確定申告の進め方を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 築25年の中古マンションを50歳で売却する意思を固め、確定申告が初めてで手元にいくら残るか計算できず不安な方
- 譜面通りに計算した売却益から税金と諸費用が想像以上に引かれる気がして、事前に減価償却の仕組みを把握したい方
- 仲介会社から提示された売却価格だけを見て安心していたが、税引き後の受取額が分からず落ち着かない気持ちの方
中古マンション売却で減価償却費が必要になる理由
マンションを売却したときの税金は、売却価格そのものには掛かりません。売却価格から取得費(購入時にかかった費用)と譲渡費用(仲介手数料など売却時にかかった費用)を差し引いた「譲渡所得」に対して税金が計算されます。
ここで問題になるのが、取得費のうち建物部分の扱いです。建物は時間とともに価値が減っていくとみなされ、購入価格のまま取得費に計上することはできません。購入価格から減価償却費を差し引いた金額が、建物の取得費になります。土地は時間が経っても劣化しないとみなされ、減価償却の対象外です。土地部分の取得費は購入価格のまま使えます。
建物と土地の価格を分けて計算し忘れると、譲渡所得を大きく見誤ります。契約書の記載を必ず確認してください。
減価償却費の計算方法|中古マンションの耐用年数と計算式
鉄筋コンクリート造の法定耐用年数
減価償却費の計算には、建物の構造ごとに決められた法定耐用年数と償却率を使います。多くの中古マンションは鉄筋コンクリート造(RC造)で、法定耐用年数は47年ですが、マイホーム(非業務用)の減価償却費計算にはその1.5倍の70年に対応する償却率0.015を用います(国税庁の耐用年数表、2026年9月時点)。木造の一戸建てなら法定耐用年数は22年で、非業務用の計算にはその1.5倍の33年に対応する償却率0.031を用いるため、構造によって減価償却費の進み方が変わります。
計算式と償却率の当てはめ方
個人がマイホームとして使っていた不動産の減価償却費は、次の式で求めます。
減価償却費=建物の購入価格×0.9×償却率×経過年数です。
0.9を掛けるのは、事業用ではなく自宅として使っていた期間の減価償却費を求める際の決まりです。経過年数は購入してから売却するまでの年数で、6か月以上は1年として数えます。
償却率は構造によって違うため、木造とRC造を取り違えると減価償却費が大きくずれます。管理規約や登記簿で構造を確認してください。
具体例でみる中古マンションの取得費と譲渡所得
購入時の取得費を建物と土地に分ける
購入価格3,000万円(建物部分2,000万円、土地部分1,000万円)のマンションを、購入から20年経って売却するケースで計算します。
減価償却費は2,000万円×0.9×0.015×20年=540万円です。
建物の取得費は2,000万円-540万円=1,460万円です。
土地の取得費は購入価格のまま1,000万円のため、総取得費は1,460万円+1,000万円=2,460万円になります。
譲渡所得を求める計算
このマンションを3,000万円で売却し、仲介手数料などの譲渡費用が100万円かかったとすると、譲渡所得は3,000万円-2,460万円-100万円=440万円です。
この440万円に対して、所有期間に応じた税率が掛かります。
経過年数を1年間違えるだけで減価償却費が約27万円ずれます。購入時の契約書に記載された引渡日を基準に数えてください。
マンション売却益にかかる税金の税率と計算の流れ
譲渡所得にかかる税率は、マンションを所有していた期間によって変わります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得です。長期譲渡所得の税率は所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%を合わせた20.315%、短期譲渡所得の税率は合計39.63%です(2026年9月時点)。
先ほどの計算例で長期譲渡所得にあたる場合、税額は440万円×20.315%=約89万円です。売却価格3,000万円から税金約89万円と譲渡費用100万円を差し引くと、手元に残る金額は約2,811万円になります。
税金と費用の全体像は不動産売却にかかる税金と費用の全体像|いくら手元に残る?で解説しています。
この税金・費用・手残りの比率を図で示します。
※3,000万円でマンションを売却・長期譲渡・特別控除適用なしの概算例(2026年9月時点)
税額約89万円と譲渡費用100万円を合わせても、売却価格に対する割合は6%ほどに収まることが分かります。
この比率は売却価格と取得費の差が小さいケースの概算です。取得費が低い古いマンションほど、税金の比率は上がります。
使える控除と特例|マンション売却の3,000万円特別控除
自分が住んでいたマンション(マイホーム)を売却した場合、「居住用財産の3,000万円特別控除」を使うと、譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます。先ほどの計算例では譲渡所得が440万円なので、この特例を適用すれば譲渡所得はゼロになり、税額もゼロになります。
ただし、この特例にはマンションを売却した相手が親族でないことや、売却した年の前年及び前々年にこの特例の適用を受けていないことなど条件があります。特例の適用条件は改正される場合があるため、最新の条件は国税庁または税理士に確認してください。
特例を適用できるかどうかで税額がゼロになるかどうかが大きく変わるため、確定申告前に必ず条件を確かめてください。
確定申告と中古マンションの減価償却費に必要な書類
マンション売却で譲渡所得が発生した場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告が必要です。3,000万円特別控除を使って税額がゼロになる場合でも、特例を適用するための申告は必要です。
確定申告に必要な書類は、購入時と売却時それぞれの売買契約書、仲介手数料など譲渡費用の領収書、登記事項証明書(登記簿謄本)、確定申告書、譲渡所得の内訳書などです。購入時の契約書を紛失していると建物と土地の価格が分からず、減価償却費の計算に時間がかかります。手元にいくら残るかを確定申告前に見積もる方法はマンション売却で手元に残る金額の計算方法で解説しています。
購入時の契約書が見つからない場合は、不動産会社や売主だった人に写しが残っていないか確認してみてください。
確定申告を自分でやるか不動産売却の専門家に頼むか
減価償却費の計算と譲渡所得の算出さえ済めば、確定申告書と譲渡所得の内訳書は国税庁の確定申告書作成コーナーを使って自分で作成できます。計算例のような単純なケースなら、1日あれば作成できる場合が多いです。
一方で、建物と土地の価格が契約書に分かれていない場合や、複数回のリフォームで取得費に加算できる費用がある場合は、税理士に依頼したほうが計算の誤りを避けられます。税理士への依頼費用は譲渡所得税の確定申告だけであれば5万円から10万円程度が目安とされていますが、依頼先によって異なります。
税理士に依頼する場合も、減価償却費の基礎になる購入時の資料はこちら側で集めておくと費用を抑えられます。
よくある質問
減価償却費が増えると売却時の税金は安くなりますか?
いいえ、反対です。減価償却費が増えるほど建物の取得費は減り、譲渡所得は増える方向に働くため、税金は高くなる傾向があります。
土地の部分も減価償却の対象になりますか?
土地は時間が経っても劣化しないとみなされ、減価償却の対象外です。建物部分だけに減価償却費を計算し、土地の取得費は購入価格のまま使います。
購入時の契約書で建物価格と土地価格が分かれていない場合はどうしますか?
契約書に記載された消費税額から建物価格を逆算する方法や、購入当時の固定資産税評価額の比率で建物と土地に按分する方法があります。どちらも計算が複雑になりやすいため、税理士に相談することをおすすめします。
法定耐用年数の1.5倍である70年を超えて住んでいた場合、減価償却費はどう計算しますか?
法定耐用年数をすでに超えている中古マンションの場合でも、減価償却費の計算式自体は変わりません。ただし、非事業用の建物について取得費から差し引く減価償却費相当額は、取得価額の95%相当額が上限とされており、計算結果がこれを超える場合は取得価額の95%を減価償却費とします。詳しい当てはめ方は税理士または国税庁の案内で確認してください。
3,000万円特別控除と減価償却費の計算はどちらを先にしますか?
先に減価償却費を差し引いて建物の取得費を確定させ、譲渡所得を計算します。そのあとで3,000万円特別控除を適用する順番です。
中古マンションの減価償却費を踏まえた売却の進め方
中古マンションの減価償却費は、建物の購入価格に法定耐用年数ごとの償却率と経過年数を掛けて求め、取得費から差し引くことで譲渡所得の額を決めます。鉄筋コンクリート造なら償却率0.015で計算し、譲渡所得に対して長期譲渡所得なら20.315%、短期譲渡所得なら39.63%の税率が掛かります。居住用財産の3,000万円特別控除を使えれば、譲渡所得が小さいケースでは税額がゼロになることもあります。ぜひ本記事の計算方法を参考に、自分のマンションの購入時の資料を確認しながら手元に残る金額を見積もってください。
出典
- 国税庁「No.3252 取得費となるもの」
- 国税庁「No.3261 建物の取得費の計算」
- 国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備等)」
