マンション売却でよくあるトラブル事例と回避策
マンション売却を進める中で、内覧の案内文や広告の掲載範囲を見て、離婚や残債といった事情が近隣や職場に伝わらないか気になる方は少なくありません。マンション売却で実際に起こりやすいトラブルには、売却価格が住宅ローンの残債を下回る、契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん、売買契約の内容と異なる欠陥について売主が負う責任)を問われる、媒介契約の内容を誤解したまま進めて不利な条件を受け入れてしまう、といった事例が挙げられます。本記事では、マンション売却で起こりやすいトラブルの事例と、それぞれの回避策を解説します。制度の内容は2026年9月時点のものです。
この記事はこんな方に向いています
- 離婚に伴いマンションを売ろうとしているが、周囲に知られずに進めたい中でトラブルに遭わないか不安な方
- ローンの残債が残るマンションの売却で時間の切迫があり、よくあるトラブル事例を先に知って備えたい方
- 売れない状況が続き精神的な余裕がなくなる中、売却時に起こりやすい問題を回避する方法を確認したい方
マンション売却で起こりやすいトラブルの全体像とよくある事例
マンション売却で起こりやすいトラブルには、おおまかに4つのタイプがあります。売却価格がローンの残債を下回り引っ越し費用の見込みが崩れる資金面のトラブル、内覧や広告で事情が周囲に伝わってしまう情報開示のトラブル、引き渡し後に設備の不具合を指摘される契約不適合責任のトラブル、そして媒介契約の内容を理解せずに進めて不利な条件を受け入れてしまう不動産会社とのトラブルです。
事情を知られたくない場合、不動産会社に直接相談する前に、自分のマンションがいくらで売れそうかを把握しておくと、その後の判断がぶれにくくなります。氏名や物件情報を細かく入力せずに概算を確認できるマンションの匿名査定を使えば、周囲に知られる前に売却相場の感触をつかめます。
トラブルの多くは、売却を決める前の情報不足から生まれます。早い段階で概算を把握しておくと安心です。
ローン残債が残るマンション売却で起こりやすいトラブル
売却価格がローン残債を下回るケース
マンションの売却価格が住宅ローンの残債を下回ると、売却代金だけでは完済できず、差額を自己資金で用意するか、金融機関と相談して任意売却を検討する必要が出てきます。抵当権(ていとうけん、ローンを担保するために不動産に設定される権利)が付いたままでは原則として買主への引き渡しができないため、残債の扱いを決めずに売却活動を進めると、売買契約の直前で話が止まるトラブルにつながります。
残債の一括返済と抵当権抹消のタイミング
売買契約が成立したら、引き渡しと同時に残債を一括返済し、抵当権抹消登記を行うのが一般的な流れです。この手続きには金融機関や司法書士との調整が必要で、タイミングが合わないと引き渡しが延びることがあります。売却後に手元へ残る金額を事前に計算しておくと、返済の見通しが立てやすくなります。手元に残る金額の計算方法はマンション売却で手元に残る金額の計算方法で解説しています。
残債が残る場合は、売却前に金融機関へ相談し、一括返済できる見込みを確認しておくと手続きがスムーズです。
離婚に伴うマンション売却を周囲に知られずに進める方法
離婚を理由にマンションを売却する場合、不動産会社に事情そのものを詳しく伝える義務はありません。媒介契約を結ぶ際に「広告を出さずに買主を探してほしい」と依頼すれば、ポータルサイトへの掲載を避けたまま売却活動を進められます。近隣や知人に知られるリスクを抑えられる一方、買主が見つかるまでの時間が長くなりやすい面もあります。
事情を伝えずに概算を把握したい場合は、AIが過去の取引データから自動で価格を算出する匿名査定を使う方法もあります。精度には限界があり、最終的な金額は不動産会社の訪問査定で確認する必要があります。匿名査定・AI査定の仕組みと限界は匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しています。
広告非公開の希望は媒介契約を結ぶ時点で伝えないと反映されないため、契約前に明確に伝えてください。
内覧・契約でよくあるマンション売却トラブルと回避策
内覧時の近隣トラブル
内覧の日程が近隣住民の生活時間と重なると、エレベーターや共用部分で顔を合わせ、事情を知られるきっかけになることがあります。内覧の時間帯を平日の日中に集中させたり、1回あたりの人数を絞るよう不動産会社に依頼したりすることで、接触の機会を減らせます。
契約不適合責任によるトラブル
引き渡し後に設備の不具合や雨漏りなどが見つかると、売主は契約不適合責任を問われる場合があります。売却前に分かっている不具合は、契約書の中で正確に伝えておくことが、引き渡し後のトラブルを避ける基本です。知っていた不具合を伝えずに引き渡した場合、後から損害賠償を求められる可能性があります。
設備の不具合は小さなことでも契約書に書面で残しておくと、後のトラブルを防げます。
「マンションはデメリットだらけ」と感じて売却が長引くときの見直し点
内覧の反応が薄く、マンションはデメリットだらけで売れないのではないかと感じる時期は少なくありません。実際には、売れない理由の多くは物件そのものの欠点ではなく、売却価格の設定や情報開示の範囲にあります。売却相場より高い価格のまま掲載を続けていないか、間取りや設備の写真・説明が不足していないかを、販売開始から1〜2か月を目安に見直すと、状況が変わることがあります。
不動産会社1社だけの意見にもとづいて価格を決めている場合、他社の視点が入らず、売却相場とのズレに気づきにくいこともあります。複数の不動産会社に匿名で概算を確認し、価格の妥当性を比べておくと、デメリットだらけに見える状況の原因が物件か価格設定かを見分けやすくなります。
売れない時期が続くと物件自体を疑いたくなりますが、まず価格設定と情報開示の範囲を見直してください。
不動産会社・媒介契約で起こるトラブルを避けるための確認事項
媒介契約には、1社に依頼する専任媒介契約と、複数社に同時に依頼できる一般媒介契約があります。専任媒介契約は不動産会社からの報告義務が明確な一方、1社の対応力に依存するため、事情を抱えた売却では対応の丁寧さを事前に確認しておく必要があります。一般媒介契約は複数社に依頼できますが、広告非公開の希望が伝わりにくくなる場合があるため、依頼する全ての不動産会社に同じ条件を伝えることが大切です。
仲介手数料についても、契約時にいくら・いつ支払うのかを確認しておくと、引き渡し後の思わぬ請求を避けられます。仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、上限を超える請求は認められません。
媒介契約を結ぶ前に、広告の出し方と仲介手数料の支払いタイミングを確認してください。
売却後の税金・確定申告で起こるマンション売却トラブルの防止
マンションを売却して利益(譲渡所得)が出た場合、売却した年の翌年に確定申告をする必要があります。確定申告を忘れると、後から税務署から指摘を受け、延滞税が加算される場合があります。自宅として使っていたマンションであれば、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例が利用できる場合があります。適用には細かい条件があるため、売却前に税理士か税務署へ確認しておくと、申告漏れによるトラブルを避けられます。
確定申告の期限は売却した翌年の2月16日から3月15日が目安です。忘れずにスケジュールに入れてください。
トラブルを避けるマンション売却の手順
ここまでの事例を踏まえると、トラブルを避けながらマンション売却を進める手順は、匿名査定から確定申告の準備まで次の6段階に分かれます。
氏名や事情を明かさずに概算を確認
広告非公開の希望をこの時点で伝える
時間帯・人数を調整して接触を減らす
契約不適合責任にかかわる欠陥を契約書に明記
抵当権抹消登記のタイミングを調整
譲渡所得が出た場合は翌年に申告
手順の中でも、広告非公開の希望と不具合の開示は契約前に伝えておくことが、後のトラブルを防ぐ分かれ目になります。
手順を一つずつ踏んでおくと、どの段階でトラブルが起きやすいかを事前に把握できます。
よくある質問
ローン残債が残っていてもマンションは売却できますか?
売却代金でローン残債を完済できれば売却できます。完済できない場合は自己資金で補うか、金融機関と相談して任意売却を検討する方法があります。
離婚が理由だと不動産会社に詳しい事情を伝える必要がありますか?
詳しい事情を伝える義務はありません。媒介契約の際に広告非公開や内覧の対応方法を希望として伝えれば、事情そのものを説明せずに進められます。
内覧で近隣に知られずに進める方法はありますか?
内覧の時間帯を平日の日中に集中させたり、1回の人数を絞ったりする依頼を不動産会社にすると、接触の機会を減らせます。
契約不適合責任とは何ですか?
売買契約の内容と異なる欠陥が引き渡し後に見つかった場合に、売主が負う責任です。知っている不具合は契約前に伝えておくことが基本です。
売却後に確定申告が必要なのはどんな場合ですか?
マンション売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に確定申告が必要です。マイホームの特例が使える場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
マンション売却のトラブルを避けて安心して進めるために
マンション売却で起こりやすいトラブルは、ローン残債、情報開示の範囲、契約不適合責任、媒介契約の内容、確定申告の5つの場面に集中しています。それぞれの場面で確認すべきことを事前に押さえておけば、事情を周囲に知られないまま進めることも、残債の返済見通しを立てることも、どちらも可能です。ぜひ本記事のトラブル事例と回避策を参考に、自分の状況に合った手順でマンション売却を進めてください。
出典
- 国土交通省「宅地建物取引業法」
- 国土交通省「標準媒介契約約款」
- 国税庁「マイホームを売ったときの特例」
- 国税庁「確定申告の手引き」
- 法務省「不動産登記法」
