任意売却できないケースとは?断られる理由とその後の選択肢
任意売却の相談を不動産会社に持ち込んだあと、「このケースは難しい」と言われて話が止まることがあります。住宅ローンの滞納が続き、裁判所から競売の開始決定通知や期間入札の通知が届いているのに、任意売却の手続きが進まないまま時間だけが過ぎていく状況です。
任意売却は、抵当権(ていとうけん)を持つすべての金融機関や債権者が任意売却に同意しなければ成立しません。競売の入札期日が迫っている場合や、複数の債権者の同意がまとまらない場合には、任意売却ができないケースとして扱われます。この同意の仕組みは本記事執筆時点の制度に基づいています。
本記事では、任意売却ができないと判断される具体的な条件と、断られたあとに検討できる選択肢を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- ローン残債が多く任意売却を検討しているが、断られるケースがあると知り不安を抱えている42歳の方
- 離婚に伴い自宅を任意売却したいが、周囲に知られずに進めたい中で断られた場合の選択肢を知りたい方
- 時間の切迫がある中で、任意売却ができないと判断された後にどう動けばよいか分からず焦っている方
任意売却できないケースに共通する条件|不動産の抵当権者の同意が前提
任意売却は、住宅ローンを借りている金融機関だけでなく、その不動産に設定された抵当権を持つすべての債権者が売却に同意することで成立します。第一抵当権者である主要な金融機関が同意しても、第二抵当権者や消費者金融などの債権者が同意しなければ、任意売却はそのまま進められません。
金融機関との連絡を避けて督促を無視した状態が続くと、金融機関は話し合いの余地がないと判断し、裁判所を通じた競売の手続きに進めてしまいます。任意売却できないケースの多くは、この同意形成の段階でつまずいています。
抵当権者が複数いる場合は、全員の同意を取る交渉に時間がかかるため、早めに任意売却の相談をしておくことが欠かせません。
競売手続きが進んだ家で起こる任意売却できないケース
住宅ローンの滞納が一定期間続くと、金融機関は裁判所に競売の申立てを行います。競売開始決定が出たあと、裁判所が入札の期間(期間入札)を定め、その期間内に入札が行われて開札日を迎えます。
任意売却は、この競売の手続きと並行して進める形になりますが、開札日が近づくと、買主を見つけて売買契約を結び、債権者の同意を得て抵当権の抹消手続きまで終える時間が足りなくなります。競売の取り下げが認められる期限を過ぎてしまった家は、任意売却できないケースに当たります。
競売の開札日が決まったら、残された時間は数か月単位しかないこともあるため、任意売却の相談を先延ばしにしないでください。
複数の債権者がいる物件で任意売却の合意形成に失敗するケース
住宅ローン以外の抵当権者がいる場合
自宅を担保に追加の融資を受けていたり、根抵当権(ねていとうけん)付きの事業資金を借りていたりすると、住宅ローンの金融機関以外にも抵当権者が存在します。この場合、売却額をどの債権者にどれだけ配分するかについて全員の合意が必要になり、話がまとまらないまま時間が過ぎてしまうことがあります。
連帯保証人や共有者の同意が得られない場合
自宅が夫婦の共有名義になっていたり、配偶者が連帯保証人になっていたりする場合は、その人の同意も欠かせません。離婚協議中で連絡が取りづらい状況では、この同意が得られず、任意売却できないケースに進んでしまうことがあります。
共有者や連帯保証人への連絡は、不動産会社や弁護士を通じて進めると、感情的にならずに話を進めやすくなります。
固定資産税などの差し押さえが入っている不動産の任意売却
固定資産税の滞納による差し押さえの取り扱いは、本記事執筆時点の制度を前提にしています。固定資産税や所得税などを滞納すると、国税や地方税の差し押さえが不動産に入ることがあります。この場合、住宅ローンの金融機関の同意だけでは任意売却が進まず、税務署や自治体による差し押さえの解除についても交渉が必要になります。
税金の滞納額が売却代金で完済できる見込みがあれば解除に応じてもらえる場合もありますが、交渉がまとまらなければ任意売却できないケースとして扱われます。
税金の差し押さえがある場合は、早めに税務署や自治体へ相談し、解除の条件を確認しておくと交渉が進みやすくなります。
ここまでの条件を一度に判断するなら、債権者全員の同意が得られているかどうかが最初の分岐点になります。
同意が得られていない場合は、任意売却ができない可能性を踏まえて、次の章で紹介する選択肢も合わせて検討してください。
物件自体の事情で買い手がつかず任意売却できないケース
任意売却は、債権者の同意が取れても、買主が見つからなければ成立しません。過去に自然死以外の死亡があった物件や、火災・浸水の履歴がある物件は、告知義務の対象になることがあり、買主の判断に影響して売却までの期間が延びることがあります。
こうした事情は事故物件の売却と告知義務や火事・浸水履歴のある物件の告知義務で解説している内容と重なり、時間の制約がある任意売却では、買主探しの難しさがそのまま任意売却できないケースに結びつくことがあります。
物件に事情がある場合は、早い段階で不動産会社に伝えておくと、買主探しの戦略を立てやすくなります。
滞納からの相談が遅れて家の任意売却ができなくなる流れ
競売の開札までの流れ
住宅ローンの滞納が始まると、督促、代位弁済(保証会社が立て替えて払う手続き)、競売の申立て、競売開始決定、期間入札、開札という流れで進みます。任意売却を選べる期間は、この流れの中の、開札日を迎える前までです。
相談が遅れやすい典型的な理由
督促の書類を見ないようにしてしまったり、家族や勤務先の会社に知られることを避けて誰にも相談できなかったりすると、任意売却の相談のタイミングが遅れます。精神的な余裕がない状態で時間が過ぎ、気づいたときには開札が目前という例も見られます。
督促状が届いた時点で動き始めれば、任意売却の選択肢が残る可能性は十分にあります。
任意売却を断られたあとに検討できる不動産売却の選択肢
任意売却できないケースと判断された場合でも、選択肢がなくなるわけではありません。競売のまま進める、不足分を自己資金や親族からの援助で用意して通常の売却に切り替える、リースバック(売却後に同じ家を賃貸として借り直す仕組み)を検討する、といった方法があります。
住宅ローンの支払いそのものが難しい場合は、住宅ローンが払えないときに家を売って完済する方法で、任意売却に至る前の段階からの対応を解説しています。弁護士への相談や、個人再生・自己破産といった債務整理の制度と合わせて検討する必要も出てきます。
競売になった場合、任意売却より価格は下がりますが、売却自体が止まるわけではありません。
離婚など周囲に知られたくない事情を抱えた不動産売却の進め方
離婚に伴う任意売却では、近所や職場に知られずに進めたいという事情を抱える方が少なくありません。一括査定サイトに情報を登録すると複数の不動産会社から営業の電話がかかってくることがあり、周囲に知られる不安につながります。
匿名査定の仕組みを使えば、不動産会社に連絡先を知らせる前に、おおまかな価格の見通しを得られます。匿名査定と一括査定の違いで、営業電話を避けながら売却相場を知る方法を解説しています。
匿名査定で価格の見通しを立てたうえで、信頼できる不動産会社に絞って任意売却の相談を進めると安心です。
よくある質問
任意売却ができないと言われたら、すぐに競売になりますか?
競売の申立てがすでにされていれば手続きは進みますが、開札日より前であれば、条件を整え直して任意売却に切り替えられる場合もあります。不動産会社や弁護士に、現在の手続きの段階を確認してください。
離婚中で配偶者と連絡が取れない場合、任意売却はあきらめるしかないですか?
共有者や連帯保証人の同意がどうしても取れない場合は難しくなりますが、弁護士や調停の手続きを通じて連絡を取る方法が残っています。不動産会社に相談し、専門家への橋渡しを依頼する方法もあります。
任意売却できないケースでも、不動産会社に相談する意味はありますか?
あります。買主探しの戦略や、債権者との交渉の進め方は物件ごとに異なるため、早い段階で任意売却の相談をすれば、競売より条件の良い選択肢が見つかることもあります。
固定資産税の差し押さえがあると、任意売却はできなくなりますか?
差し押さえの解除交渉がまとまれば任意売却を進められる場合があります。滞納額が売却代金で完済できる見込みがあるかどうかを、税務署や自治体に確認することが出発点になります。
任意売却を周囲に知られずに進めることはできますか?
匿名査定の仕組みを使えば、連絡先を明かす前に価格の見通しを把握できます。その後に不動産会社を絞って相談すれば、周囲への連絡を最小限に抑えながら進めやすくなります。
任意売却できないケースを踏まえた、今からの動き方
任意売却できないケースは、債権者全員の同意が得られない場合、競売の開札日が迫っている場合、物件自体に買い手がつきにくい事情がある場合など、いくつかの条件が重なって起こります。どの条件に当たっているかが分かれば、競売のまま進めるか、自己資金を用意するか、リースバックを使うかといった次の選択肢も具体的に絞り込めます。
ぜひ本記事で紹介した任意売却できないケースの条件とその後の選択肢を参考に、早い段階で不動産会社や専門家に相談してください。
出典
- 法務省「民事執行法」
- 国税庁「国税の滞納処分(差押え)に関する手続」
- 総務省「地方税の滞納処分に関する情報」
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月策定)
