不動産の囲い込みとは?売主が損する仕組みと対策
マンションを売り出してから数ヶ月、内覧の予約がほとんど入らず、問い合わせ件数の報告も毎回似たような数字しか届きません。そんな中で「他の不動産会社から買いたいという連絡をしたのに断られた」という話を知人から聞くと、何かがおかしいと感じ始めます。
その違和感の正体は、不動産の囲い込みと呼ばれる行為である可能性があります。囲い込みとは、売却の仲介を担当する不動産会社が、他社から届く購入希望者の問い合わせを意図的に断り、自社だけで買主を見つけて売主・買主の双方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」を狙う行為を指します。宅地建物取引業法では専任媒介契約を結ぶと7営業日以内にレインズへ登録する義務が定められていますが(2026年9月時点)、登録後の対応は不動産会社の裁量に委ねられる部分があり、ここに囲い込みが入り込む余地が生まれます。本記事では囲い込みが起きる仕組みと売主が負う損失、見抜き方、対策までを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 自宅を売り出してから数ヶ月内覧が増えず、仲介会社に囲い込みをされているのではと疑い始めている方
- 通勤の変化で自宅を売却中だが、他社からの問い合わせを断られていると聞いて対策を知りたい方
- 住み替え先の契約期限が近づく中、自宅の売却が進まない理由が囲い込みかもしれないと不安な方
不動産の囲い込みとは|仲介会社が両手仲介を狙う仕組み
不動産の囲い込みとは、売却を依頼した不動産会社が、他の不動産会社から入る購入希望者の問い合わせを「商談中です」「申し込みが入っています」などと伝えて断る行為です。実際には商談が進んでいないのに断る点が問題になります。不動産会社が受け取る仲介手数料は、売主からだけ受け取る「片手仲介」よりも、売主・買主の両方から受け取る「両手仲介」のほうが収入が大きくなります。この収入差が、他社の顧客を遠ざけてでも自社で買主を見つけようとする動機になります。
囲い込みが起きても、不動産会社が売主に対して「囲い込んでいます」と説明することはありません。売主側からは、内覧の予約が増えない、問い合わせ件数の報告が少ない、といった結果からしか気づけない点が、この問題の見抜きにくさにつながっています。
囲い込みは不動産会社側が認めることがほとんどないため、売主側が記録を残しながら動く必要があります。
マンション売却が長引く理由と囲い込みによる売主の損失
囲い込みが起きると、本来なら買いたい人が複数いる状態でも、売主の目に見える問い合わせは一部に限られます。結果として内覧が入らない期間が延び、マンション売却にかかる期間そのものが長引きます。
機会損失になる具体的な中身
他社から紹介される可能性があった購入希望者と出会う機会そのものが失われます。候補が1人減るたびに、価格交渉で売主が譲歩を求められる場面が増え、最終的な売却価格が下がりやすくなります。
価格交渉で売主が不利になる場面
買主候補が少ない状態が続くと、せっかく現れた唯一の購入希望者から値下げ交渉を受けたとき、売主は「このまま話が流れたら次がいつ来るか分からない」という不安から、本来なら応じなくてよい値下げに応じてしまうことがあります。候補が複数いれば生まれなかった不利な条件を受け入れる構図です。
売却期間が延びるほど、住み替え先の契約期限との兼ね合いで売主側の交渉力が弱くなる点も注意してください。
媒介契約の種類とレインズ登録義務|不動産売却で起きやすい囲い込み
不動産売却の媒介契約(ばいかいけいやく・不動産会社に売却活動を依頼する契約)には、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3種類があります。契約形態によって、他社との情報共有の仕組みや不動産会社の義務が異なります。
専任媒介・専属専任媒介・一般媒介の違い
専属専任媒介契約と専任媒介契約は1社だけに売却を依頼する契約で、他社を介した取引が制限される分、不動産会社には業務報告の義務が課されます。専属専任媒介契約は1週間に1回以上、専任媒介契約は2週間に1回以上の業務報告が宅地建物取引業法で定められています(2026年9月時点)。一般媒介契約は複数の不動産会社に同時に依頼できる契約で、レインズへの登録義務や定期報告の義務はありません。
レインズへの登録義務とその期限
レインズ(指定流通機構の情報システム)は、不動産会社同士が物件情報を共有するためのネットワークです。専属専任媒介契約では契約から5営業日以内、専任媒介契約では7営業日以内にレインズへ登録することが義務付けられています(2026年9月時点)。この登録によって他社も物件情報を把握できるようになりますが、登録後に問い合わせを受けた担当者がその情報をどう扱うかまでは、法律で細かく定められていません。レインズの仕組みそのものはレインズとは?不動産売却での登録義務で解説しています。
一般媒介契約は囲い込みのリスクを下げられますが、不動産会社側の販売活動への熱意が分散しやすい面もあります。
自分の物件が囲い込みされているか確認する方法
囲い込みを見抜く最も直接的な方法は、レインズの登録状況を自分の目で確認することです。専属専任媒介契約・専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社はレインズに登録した証明として「登録証明書」を売主に発行します。この証明書に記載されたステータスが「公開中」ではなく「書面による購入申込みあり」などと表示されていると、実際には購入申込みがないのに他社からの問い合わせを断る理由に使われている疑いが出てきます。
もう一つの確認方法は、知人や家族に別の不動産会社を通じて自分の物件に問い合わせてもらうことです。紹介を断られたり、物件の詳細情報が出てこなかったりする場合は、囲い込みが起きている可能性があります。確認の具体的な手順は不動産の囲い込みとは?確認方法と売主への影響で解説しています。
登録証明書は媒介契約を結んだ直後に必ず受け取り、保管しておくと後から状況を確認しやすくなります。
自分の物件で囲い込みが起きていないかを確認し、起きていた場合にどう動くかをあらかじめ把握しておくと、売却活動が止まった原因をすぐに切り分けられます。次の流れは、媒介契約を結ぶ前の準備から、改善しない場合の契約見直しまでの手順を示したものです。
専任・専属専任の登録期限と業務報告頻度を不動産会社に確認
ステータス表示を保管して記録に残す
紹介が断られないか、物件情報が出てくるかを確認
専任媒介は2週間に1回以上、専属専任は1週間に1回以上が義務
具体的な問い合わせ内容や断った経緯の説明を求める
契約期間満了を待って一般媒介や他社への切り替えを判断
手順1〜3は契約前後にすぐ確認でき、4〜6は売却活動が進んでから囲い込みの疑いが強まった時点で動く段階を示しています。
複数社への査定依頼と一般媒介の活用|囲い込みを防ぐ対策
囲い込みを未然に防ぐ対策として、媒介契約を結ぶ前に複数の不動産会社へマンションの査定を依頼し、各社の販売方針や業務報告の頻度を比較する方法があります。匿名査定を使えば、個人情報を出す前におおよその売却相場をつかめるため、不動産会社との面談前に判断材料を増やせます。匿名査定の仕組みと精度の限界は匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しています。
媒介契約の形態そのものを一般媒介契約にする方法もあります。複数社に同時に依頼できるため、1社だけが情報を独占する状況が生まれにくくなります。ただし一般媒介契約は不動産会社ごとの販売活動への力の入れ方にばらつきが出やすく、レインズへの登録義務もないため、広く情報が行き渡るとは限りません。専任媒介契約を選ぶ場合は、契約時に「他社からの問い合わせ件数と対応内容を都度報告してほしい」と条件を伝えておくと、後から確認しやすくなります。
媒介契約を結ぶ前の質問の仕方で、担当者の対応が変わることもあるため、面談時に具体的な数字で確認してください。
発覚したときの相談先と対応|不動産売却のトラブル窓口
囲い込みの疑いが強くなった場合、まずは担当の不動産会社に直接、他社からの問い合わせ状況を文書で開示するよう求めます。それでも説明が不十分なときは、各都道府県の宅建業担当課や、公益財団法人不動産流通推進センターなどの相談窓口に状況を伝える方法があります。媒介契約の契約期間が満了していれば、契約を更新せずに別の不動産会社へ切り替える選択も可能です。
専属専任媒介契約・専任媒介契約の契約期間は最長3ヶ月と宅地建物取引業法で定められており、期間満了時に更新するかどうかは売主が選べます。囲い込みの証拠がそろわなくても、業務報告の内容に納得できなければ、更新のタイミングで不動産会社を見直すことが現実的な対応になります。
専属専任媒介契約・専任媒介契約は自動更新の特約があっても無効とされ、更新には売主からの申出が必要です。期間の定めがない一般媒介契約の場合は自動更新となっていることもあるため、満了日はカレンダーで管理しておくと安心です。
よくある質問
囲い込みをされているかどうか、不動産会社に直接聞いてもよいですか
直接尋ねる方法自体は問題ありません。ただし不動産会社が囲い込みを認めることはほとんどないため、レインズの登録証明書や業務報告の記録など、客観的な資料と合わせて確認することが実務的です。
一般媒介契約にすれば囲い込みは起きませんか
一般媒介契約は複数社に同時依頼できるため囲い込みのリスクは下がりますが、各社の販売活動への力の入れ方にばらつきが出やすく、レインズへの登録義務もないため、必ずしも早く売れるとは限りません。
囲い込みが原因で値下げしてしまった場合、後から取り戻せますか
一度合意した売買契約の条件を後から覆すことは難しく、値下げ分を取り戻す手段は基本的にありません。囲い込みの疑いがある段階で早めに業務報告を見直すことが、損失を抑える現実的な方法になります。
専任媒介契約と専属専任媒介契約、どちらが囲い込みされやすいですか
どちらも1社だけに依頼する契約形態のため、構造上は囲い込みが起きる余地があります。業務報告の頻度は専属専任媒介契約のほうが多い分、不動産会社の対応を確認しやすい面はあります。
囲い込みの疑いだけで不動産会社に損害賠償を求められますか
実際に損害が生じたことと、不動産会社の行為との因果関係を示す必要があり、疑いの段階だけで請求するのは難しいのが実情です。まずは各都道府県の宅建業担当課などの相談窓口に状況を伝え、助言を受けることが現実的です。
不動産の囲い込みを見抜き、損をしないマンション売却につなげる
不動産の囲い込みは、売主の目に見えない形で仲介手数料の都合が優先される行為であり、気づかないまま放置すると売却期間が延び、価格交渉でも不利な立場に置かれます。レインズの登録証明書を保管し、業務報告の内容を具体的に確認する習慣があれば、疑わしい状況に早い段階で気づけます。ぜひ本記事の確認方法と対策を参考に、ご自身のマンション売却の進み方を振り返ってみてください。
出典
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2第4項(専任媒介契約等の有効期間の更新)
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解説(指定流通機構への登録義務・業務処理の報告)」
- 公益財団法人東日本不動産流通機構「REINSとは」
