実家を相続したら名義変更は必須?手順と注意点を解説
父から相続した実家の名義変更をしないまま、固定資産税の納税通知書だけが毎年届き続けている方は少なくありません。帰省するたびに庭の草が伸び、誰も住まない家に手をつけられない状態が続いているケースもあります。実家を相続したら、名義変更(相続登記)は2021年の法改正により、2024年4月1日から義務になりました。相続の開始を知り、かつ不動産を取得したと知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料が科されます。
名義変更をしなくても実家に住むことや固定資産税を払うことはできますが、将来実家を売却したいと思ったときには、相続登記が済んでいなければ買主を見つけても売買契約を進められません。
本記事では、実家相続後の名義変更の手順と必要な書類、兄弟間で分け方が決まらないときの進め方、売却時に使える税の特例について解説します(2026年9月時点の情報をもとにしています)。
この記事はこんな方に向いています
- 父から実家を相続したものの、名義変更をしないまま2年が経過し義務化された登記の期限が心配な方
- 兄弟で実家の分け方が決まらない中、名義変更だけでも先に済ませておくべきか判断に迷っている方
- 名義変更を怠ると将来売却できないと聞き、固定資産税を払いながら手続きの手順を知りたい方
実家相続で名義変更は義務になった|相続登記の基本ルール
実家の名義変更とは、法務局の登記簿に記録された所有者の名前を、亡くなった父から相続人へ書き換える手続きで、正式には相続登記と呼びます。2024年4月1日に施行された不動産登記法の改正により、不動産を相続で取得した人は相続登記をする義務を負うことになりました。相続の開始を知り、かつその不動産の所有権を取得したと知った日から3年以内に申請する必要があります。
この義務化は施行日より前に相続した不動産にもさかのぼって適用されます。父を2年前に亡くして実家を相続した場合、すでに「知った日」から3年の期限が進んでいるため、2027年3月31日(施行日から3年)と、相続を知った日から3年のいずれか遅い日までに登記を済ませる必要があります。
期限の起点を「相続開始日」と誤解している方がいますが、正しくは「知った日」です。申請前に専門家へ確認しておくと安心です。
実家の名義変更を放置するとどうなる?固定資産税・売却への影響
固定資産税の負担が続く
名義変更をしなくても、固定資産税の納税通知書は届き続けます。多くの自治体では、登記簿の所有者が亡くなっていても、代表相続人として特定の人に通知書を送る運用をしているためです。誰も住まない実家に固定資産税だけを払い続ける状態は、名義変更を済ませるまで変わりません。
将来の不動産売却ができなくなる
実家の名義が父のままでは、不動産会社に査定を依頼することはできても、買主が見つかっても売買契約を結べません。不動産の売買契約を結ぶには、登記簿上の所有者と売主が一致している必要があるためです。名義変更を済ませていない実家は、結果として売却したくても売れない資産になります。
「相続放棄していないから固定資産税だけ払っておけば大丈夫」と考えると、売却の機会を逃すことがあります。
実家の名義変更に必要な書類と費用
法務局に提出する書類
実家の相続登記を法務局に申請する際は、父の死亡が分かる戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続人の住民票、実家の固定資産評価証明書、登記申請書などをそろえます。兄弟で遺産分割協議をした場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書も必要です。遺言書がある場合は、公正証書遺言や法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書以外は、家庭裁判所の検認が必要になります。
登録免許税などの費用
相続登記には登録免許税がかかり、原則として固定資産評価額の0.4%です。実家の固定資産評価額が1,000万円であれば、登録免許税は4万円になります。戸籍謄本などの取得費用や、司法書士に依頼する場合の報酬も別にかかります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産評価額の0.4% |
| 戸籍謄本・住民票等の取得費 | 数千円程度 |
| 司法書士への依頼費用 | 依頼する場合は別途発生 |
出典:法務省「不動産登記の申請における登録免許税」(2026年9月時点)をもとに作成
戸籍謄本の取得は本籍地の変遷によって複数の役所にまたがることがあり、取得だけで1〜2週間かかる場合があります。
相続登記の手順|法務局への申請から完了まで
相続登記は、まず父の相続人を確定するために戸籍謄本を取得し、誰が実家を相続するかを決めるところから始まります。兄弟で話し合って決める場合は遺産分割協議書を作成し、必要な書類がそろったら実家の所在地を管轄する法務局へ登記申請書を提出します。申請内容に不備がなければ、1〜2週間ほどで登記完了証と登記識別情報通知が交付されます。
書類の準備から申請まで自分で進めることもできますが、戸籍の収集や申請書の作成に手間がかかるため、司法書士に依頼する方も多くいます。
相続人の中に認知症の方や未成年者がいる場合は、通常の手続きに加えて成年後見人や特別代理人の選任が必要になります。
兄弟で実家の分け方が決まらないときの名義変更の進め方
兄弟との分け方が決まらないうちは、名義変更そのものが止まってしまいがちです。しかし、相続登記の義務は分け方の決着とは別に進むため、分け方が決まる前に一つの対応をとっておく方法があります。
実家の土地・建物の所有権
共有名義または単独名義で登記
この図は、父の所有権が相続によって兄弟に移る関係を示したものです。分け方が決まらない間は、いったん兄弟全員の共有名義で登記し、後から分け方を話し合う進め方があります。
共有名義で登記する方法
分け方が決まらない場合、法定相続分(きょうだいが2人なら各2分の1など)で共有名義として登記する方法があります。これは義務である名義変更の期限だけ先に満たしておき、具体的な分け方の協議は後から続ける進め方です。ただし共有名義のままでは、将来の実家の売却には共有者全員の同意が必要になります。
換価分割で売却してから分ける方法
実家に誰も住む予定がなく、誰か1人の単独名義にする理由もない場合は、いったん代表者1人の名義で登記し、実家を売却したうえで、その売却代金を兄弟で分ける換価分割(かんかぶんかつ)という方法もあります。不動産売却を前提に進めるなら、名義変更の前に売却相場の見当をつけておくと、分け方の話し合いが進みやすくなります。
共有名義のまま年数が経つと、相続人がさらに増えて権利関係が複雑になりやすいため、長期の共有は避けたいところです。
実家を売却するときに使える3000万円特別控除と期限
相続した実家を売却する場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から3,000万円を差し引ける特例があります。昭和56年5月31日以前に建築された建物であることや、相続開始から譲渡まで空き家のままであることなど要件が定められており、適用期限は2027年12月31日までとされています(2026年9月時点)。この特例を使うには、相続開始から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却する必要があります。
特例の適用を判断するには、実家の売却価格の見通しと、建築年など要件に当たるかどうかの確認が必要です。相続した不動産の査定書の取り方で解説しているとおり、査定書は特例の判断材料にもなります。
期限に間に合わせようと焦って安値で売却すると、控除で得られる額より損失が大きくなることもあるため、価格の見極めを優先してください。
名義変更後に実家を売却する手順
名義変更が完了すれば、不動産会社に実家の査定を依頼し、媒介契約を結んで売却活動を始められます。不動産の査定はインターネットの匿名査定やAI査定でおおまかな売却相場を調べることもできますが、匿名査定・AI査定の精度で解説しているとおり、実際の建物の状態までは反映されないため、最終的な売却価格は訪問査定で確認することになります。
匿名査定には、不動産会社からの連絡を避けられる利点がある一方で、匿名査定のデメリットで解説しているとおり、正確な価格が分かりにくい面もあります。実家の売却を具体的に進めるなら、早い段階で訪問査定に切り替えるとよいでしょう。
空き家のまま売却を進める場合、仲介に加えて不動産会社による買取も選択肢になりますが、買取は仲介より価格が下がりやすい傾向があります。
よくある質問
実家の名義変更をしないまま放置すると過料はいつから科されますか
相続の開始を知り、かつ不動産を取得したと知った日から3年以内に申請がない場合、正当な理由がなければ法務局から催告があり、それでも応じないと10万円以下の過料が科される可能性があります。すぐに過料になるわけではありませんが、期限を過ぎている自覚があるなら早めに動く必要があります。
兄弟の同意が得られないまま名義変更はできますか
法定相続分での共有名義であれば、相続人の1人からでも単独で登記を申請できます。ただし共有名義のままでは、実家の売却時に共有者全員の同意が必要になるため、分け方の話し合いは別途進める必要があります。
実家の名義変更にかかる期間はどれくらいですか
戸籍謄本などの書類収集に2週間から1か月程度、法務局への申請から登記完了までさらに1〜2週間ほどかかるのが一般的です。遺産分割協議がまとまっていない場合は、その話し合いの期間が別に加わります。
固定資産税は名義変更前でも払う必要がありますか
名義変更前でも、実家の固定資産税は代表相続人などに通知が届き、支払う必要があります。名義変更を終えていないことを理由に納税を止めることはできません。
実家の名義変更を自分で行うことはできますか
書類をそろえて法務局へ申請する手続き自体は、相続人本人が行うこともできます。ただし戸籍の収集や遺産分割協議書の作成に手間がかかるため、司法書士に依頼する方も多くいます。
実家相続の名義変更をまとめて進めるために
実家を相続したら名義変更は義務であり、相続を知った日から3年以内に相続登記を済ませる必要があります。放置すれば固定資産税の負担は続き、売却したいと思ったときに契約を結べない状態が生まれます。兄弟との分け方が決まらないときも、共有名義での登記や換価分割といった進め方があり、名義変更だけを先に済ませることは可能です。不動産売却を検討するなら3,000万円特別控除の期限や査定の方法も早めに確認しておく必要があります。ぜひ本記事の手順と注意点を参考に、実家の名義変更を進めてください。
出典
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 法務省「不動産登記の申請における登録免許税」
- 国税庁「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家に係る譲渡所得の特別控除)」
- 政府広報オンライン「知っておきたい遺言書のこと」
