売り出し価格とは?決め方と成約価格との違いを解説
不動産ポータルサイトに並ぶ「売り出し価格」の数字は、売主が最初に提示した希望額であり、実際に取引が成立した金額ではありません。公益財団法人東日本不動産流通機構(レインズ)が公表する成約価格の情報を見ると、売り出し価格と成約価格の間に差があることが分かります。
売り出し価格は売主と不動産会社が相談して決める募集価格で、成約価格は買主との交渉を経て実際に売買契約を結んだ金額です。両者は別の数字として扱われ、売り出し価格をそのまま自宅の価値として信じると、相場感がずれます。
本記事では、売り出し価格とは何か、決め方の手順、成約価格との違いを解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 売るかどうかまだ決めていないが、売り出し価格の決め方と成約価格の違いをスマホで調べている48歳の方
- 営業電話を受けたくないため個人情報を渡さずに、自分の家の適正な売り出し価格の目安を知りたい方
- 築25年の自宅の価値を把握したいが、査定を依頼する前に相場の考え方を自分で理解しておきたい方
売り出し価格とは|不動産売却における意味と役割
売り出し価格とは、不動産会社が運営する不動産ポータルサイトや店頭チラシに掲載される、売主が買主を募集する際に提示する金額です。不動産売却の流れでは、不動産会社による査定を経て、売主がこの金額を決めてから物件情報が公開されます。
売り出し価格には法的な拘束力がなく、あくまで「この金額なら売りたい」という売主側の希望額にすぎません。実際の売買契約では、買主からの値引き交渉を経て、売り出し価格より低い金額で合意することが珍しくありません。不動産売却の全体の流れは不動産売却の完全ガイドで解説しています。
売り出し価格は変更できる金額です。反響が乏しければ途中で見直す前提で考えてください。
成約価格との違い|不動産売却で売り出し価格が下がる理由
成約価格とは、買主と売主が売買契約を結んだ時点で確定する実際の取引金額です。売り出し価格が3000万円でも、値引き交渉の結果2800万円で成約するといったことが起こり、両者の間には差が生まれます。
この差が生まれる理由は、買主が値引きを前提に指値(さしね、買主が希望する購入価格を提示すること)を入れるためです。売主側も最初から数%の値引き余地を見込んで売り出し価格を設定することが多く、売り出し価格をそのまま成約価格と考えると、自宅の資産価値を高く見積もりすぎてしまいます。
値引き交渉を見込んで高めに出すか、売却相場通りで早期成約を狙うか、不動産会社と事前に方針を決めておくと迷いません。
決め方の手順|売り出し価格と査定価格の関係
売り出し価格は、不動産会社による査定価格を土台にして、売主の希望や市場の動向を加味して決まります。査定価格だけで機械的に決まるわけではなく、売主がどれくらいの期間で売りたいかによっても変わります。
査定価格を基準にする考え方
査定価格は、不動産会社が過去の成約事例や周辺の取引価格を基に算出した「妥当な売却価格の目安」です。査定価格をそのまま売り出し価格にする売主もいれば、値引き交渉を見込んで査定価格より上乗せした金額で売り出す売主もいます。
売主の希望と市場動向のすり合わせ
急いで売りたい場合は査定価格に近い金額で売り出し、時間をかけてでも高く売りたい場合は査定価格より高めに設定するのが一般的な考え方です。ただし高く設定しすぎると、このあと説明する売れ残りのリスクが高まります。
査定価格の根拠(比較した事例や築年数の補正の内容)を不動産会社に確認しておくと、売り出し価格を決める判断がしやすくなります。
売り出し価格のまま成約できたとしても、受け取った金額の全額が手元に残るわけではありません。仲介手数料などの諸費用や、譲渡所得税などの税金を差し引いた金額が実際の手取りになります。
※売り出し価格と同額の3000万円で成約・長期譲渡・控除適用なしの概算例(2026年9月時点)
売却代金から税金や諸費用を差し引くと、手元に残る金額は売り出し価格よりかなり少なくなることが分かります。
家の売り出し価格を高く設定しすぎるリスク
売り出し価格を売却相場より高く設定すると、不動産ポータルサイトへの反響(問い合わせや内覧の申し込み)が減り、掲載期間が長引きます。掲載から時間が経った物件は「売れ残り」という印象を買主に与えやすく、結果として売却相場より大きく値下げせざるを得なくなることがあります。
一戸建てとマンションでは買主が比較する対象や売却相場の動き方が異なるため、高めに設定して様子を見られる余地も物件タイプによって変わります。一戸建ての売却相場の調べ方は一戸建て売却の相場はいくら?価格の調べ方と高く売る方法を解説で、マンションの価格の動きはマンション価格の推移は?過去10年の相場変動をわかりやすく解説で解説しています。
反響が少ないまま3か月以上経過したら、価格の見直しを不動産会社と相談する目安にしてください。
匿名で自宅の売却相場を調べる方法
売るかどうか決めていない段階で、営業電話を受けずに自宅の売却相場を知りたい場合は、匿名査定を使う方法があります。匿名査定は、住所や間取りなどの条件を入力するだけで概算の価格帯が分かる仕組みで、氏名や電話番号の入力を求められないサービスもあります。
複数の不動産会社に個人情報を渡して査定を依頼する一括査定とは異なり、匿名査定は不動産会社からの連絡が発生しにくい点が特徴です。それぞれの違いは匿名査定と一括査定の違い|営業電話なしで相場を知る使い分けで解説しています。
匿名査定で分かるのはあくまで概算の価格帯です。正式に売り出し価格を決める段階では、訪問査定で根拠を確認してください。
国土交通省のデータで見る不動産売却の相場感
自分で売却相場の目安を確認したい場合、国土交通省が公開しているデータを使う方法もあります。不動産会社の査定を受ける前に、おおまかな相場観をつかんでおくと、提示された査定価格が妥当かどうか判断しやすくなります。
不動産価格指数の見方
不動産価格指数は、国土交通省が住宅・土地の取引価格の変動を指数化して公表している統計です。地域ごとの大きな価格の上下動の傾向はつかめますが、個別の物件の価格を示すものではない点に注意が必要です。
不動産情報ライブラリでの実際の取引価格の確認方法
不動産情報ライブラリでは、実際に成約した取引価格の事例を、地域や築年数などの条件で検索できます。自宅と条件が近い事例を探すことで、売り出し価格を検討する際の参考値として使えます。
公的データは参考値であり、方位や接道状況、築年数の個別差までは反映されません。最終的な判断は査定で補ってください。
不動産の売り出し価格を見直すタイミング
売り出し価格を決めたあとも、反響の状況によっては見直しが必要です。掲載から1か月を過ぎても問い合わせが少ない場合や、内覧はあっても申し込みにつながらない場合は、価格と物件の印象にずれがある可能性があります。
値下げの幅や時期は不動産会社と相談しながら決めるのが基本で、感覚的に小刻みに下げるよりも、売却相場や反響状況を踏まえてまとまった幅で見直すほうが、買主の目に留まりやすくなります。
値下げのタイミングを逃すと売却期間が延びやすくなります。反響の推移は定期的に不動産会社に報告してもらいましょう。
よくある質問
売り出し価格とはどのように決めるのですか?
売り出し価格は、不動産会社の査定価格を土台に、売主が売却までにかけられる期間や希望額を加味して決めます。査定価格に近い金額で売り出すと早期の成約を狙いやすく、査定価格より高めに設定すると交渉の余地は広がりますが、反響が減るリスクがあります。
売り出し価格と成約価格はどれくらい差が出ますか?
差の大きさは物件や地域、市況によって異なり、一概にはいえません。公益財団法人東日本不動産流通機構(レインズ)などが公表する成約事例を確認すると、周辺の取引で実際にどの程度の差が生じているかを把握できます。
売り出し価格を高く設定しても後から下げられますか?
下げられます。ただし、掲載から時間が経ってから値下げすると「売れ残り物件」という印象を与えやすいため、最初の価格設定の段階で不動産会社と相場観をすり合わせておくことが重要です。
売るかどうか決めていなくても売却相場は調べられますか?
調べられます。匿名査定を使えば、氏名や電話番号を伝えずに概算の価格帯を確認できるほか、国土交通省の不動産情報ライブラリでも近隣の取引事例を検索できます。
査定価格と売り出し価格はなぜ違うのですか?
査定価格は不動産会社が算出する妥当な売却価格の目安で、売り出し価格は売主の意向を加えて最終的に決める募集価格です。査定価格をそのまま使う場合もあれば、値引き交渉を見込んで上乗せする場合もあります。
売り出し価格とは|決め方と成約価格との違いを振り返る
売り出し価格は売主が決める募集価格であり、成約価格は買主との交渉を経て確定する実際の取引金額です。両者には差があることを前提に、査定価格を土台にしながら、売却相場や反響の状況を見て柔軟に見直すことで、売却までの期間と最終的な手取り額のバランスが取りやすくなります。ぜひ本記事の売り出し価格の決め方と成約価格との違いを参考に、自宅の適正な価格設定を検討してください。
出典
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
- 国土交通省「不動産価格指数(住宅・土地)」
- 公益財団法人東日本不動産流通機構(レインズ)公表資料
