相続した不動産の評価額とは?計算方法・調べ方をわかりやすく解説
父から相続した実家の固定資産税の納税通知書は毎年届きますが、そこに書かれた価格だけでは相続税の計算に使う評価額は分かりません。固定資産税評価額と相続税評価額は算出方法が異なり、土地の相続税評価額は国税庁が公表する路線価(ろせんか)か、路線価のない地域では固定資産税評価額に一定の倍率をかけて求めます。
評価額が分からないままだと、相続税がいくらかかるのかも、兄弟2人でどう分けるのが公平なのかも判断できません。評価額の調べ方と計算方法が分かれば、分け方の話し合いも、実家を売却するかどうかの判断も具体的な数字で進められます。
本記事では、固定資産税評価額と相続税評価額の違いから、評価額の調べ方、土地と家屋それぞれの計算方法、兄弟との分け方への影響、空き家を放置するリスクと特例の期限までを解説します(2026年9月時点の制度にもとづきます)。
この記事はこんな方に向いています
- 父を亡くし地方の実家を相続してから固定資産税だけを払い続け、そもそも評価額がいくらなのか分からず困っている方
- 兄弟との分け方がまだ決まっておらず、相続税の特例に期限があると知って早めに評価額を把握しておきたい方
- 空き家のまま2年が経ち、知らないうちに損をする特例の期限が迫っているのではと気にかけている方
相続した不動産の評価額とは|固定資産税評価額・路線価・時価の違い
相続した不動産の評価額と呼ばれるものには、実は複数の種類があります。毎年届く固定資産税の納税通知書に記載された「固定資産税評価額」は、固定資産税や都市計画税を計算するための基準であり、時価の70%程度を目安に市区町村が算定したものです。これに対して、相続税を計算するときに使う「相続税評価額」は、土地であれば国税庁が公表する路線価をもとに算出し、時価の80%程度を目安に設定されています。
つまり、固定資産税の通知書に書かれた金額をそのまま相続税の計算に使うことはできません。土地と家屋では評価額の求め方そのものも異なります。
固定資産税評価額・相続税評価額・時価(取引価格)の3つは、呼び方だけでなく金額の水準も違うので混同しないようにしましょう。
固定資産税評価額の確認方法|相続した不動産の評価額の調べ方
相続した不動産の評価額を調べる第一歩は、固定資産税評価額の確認です。確認できる書類は複数あり、手元にあるものと役所で取得するものに分かれます。
固定資産税の納税通知書で確認する
毎年4〜5月ごろに市区町村から送られる固定資産税の納税通知書には、課税明細書が同封されており、そこに土地と家屋それぞれの固定資産税評価額が記載されています。実家を相続して以降も納税通知書が届いているなら、手元の書類だけで評価額を確認できます。
固定資産税評価証明書を取得する
納税通知書を紛失している場合や、兄弟に評価額を正確に示したい場合は、不動産がある市区町村の役所で「固定資産税評価証明書」を取得します。発行料は自治体によって異なりますが、数百円程度が目安です。相続人であれば、相続関係を示す戸籍謄本などを添えて請求できます。
固定資産税評価証明書は相続登記や相続税の申告にも使う書類なので、早めに取得しておくと後の手続きが進めやすくなります。
相続税評価額の計算方法|土地と家屋で異なる仕組み
固定資産税評価額を確認したら、次は相続税評価額の算出に進みます。土地と家屋では計算の仕組みがまったく異なります。
路線価方式と倍率方式|土地の評価額
市街地にある土地は、国税庁が公表する路線価を使う「路線価方式」で評価します。路線価に地積(面積)をかけ、土地の形状や奥行きに応じた補正率を加味して算出する方法です。路線価が定められていない郊外や農村部の土地は「倍率方式」を使い、固定資産税評価額に国税庁が地域ごとに定める評価倍率をかけて求めます。どちらの方式を使うかは土地の所在地によって決まっており、自分で選ぶことはできません。
家屋の評価額
家屋については、原則として固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。土地のような補正計算は不要で、課税明細書に記載された金額を使う点が土地との大きな違いです。
土地の補正率の計算は専門的な判断が必要な場面が多く、税理士や不動産会社に確認すると金額の見込み違いを防げます。
評価額を調べる手順|必要な書類と取得先
実際に評価額を調べる流れを、書類の取得先ごとに整理すると次の順序になります。
課税明細書に土地・家屋それぞれの固定資産税評価額が記載
不動産所在地の市区町村で固定資産税評価証明書を請求
土地の所在地から路線価方式か倍率方式かを判断
相続税評価額の合計が相続税計算の出発点になる
評価額と実際の売却可能額の差を把握
評価額は税額や分け方の基準になる金額であり、実際に売却したときの価格とは一致しない点に注意が必要です。相続で不動産の査定書が必要なときの取り方と使い方を確認しておくと、評価額と売却可能額の両方を押さえた上で判断できます。
評価額は税金の計算用の金額であり、実際に売れる価格とは別物と考えて手続きを進めてください。
評価額が兄弟との分け方や相続税額に与える影響
評価額が分かると、兄弟2人での分け方を話し合う際の基準が明確になります。実家をそのまま相続する人が、評価額をもとに他の兄弟へ金銭を支払う「代償分割(だいしょうぶんかつ)」という方法もあれば、売却した代金を分ける「換価分割(かんかぶんかつ)」という方法もあります。どちらを選ぶかによって、評価額の使い方も変わってきます。
相続税額については、相続税評価額の合計から、法定相続人の数に応じた基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いて課税遺産総額を算出し、これを法定相続人が法定相続分に応じて取得したものとみなして各取得金額に超過累進税率を適用し、その合計額が相続税の総額となります。相続した不動産以外に預貯金などの財産がある場合は、それらも合算して判断する必要があります。
| 評価の種類 | 算出方法 | 時価に対する目安 |
|---|---|---|
| 固定資産税評価額 | 市区町村が算定 | おおむね70%程度 |
| 相続税評価額(路線価方式) | 国税庁の路線価をもとに算出 | おおむね80%程度 |
| 時価(取引価格) | 実際の売買で成立する価格 | 100%(基準) |
出典:国税庁「路線価図・評価倍率表」、総務省「固定資産税」をもとに作成
この目安から分かるとおり、評価額は時価より低く出るのが一般的です。評価額だけを基準に代償分割の金額を決めると、実際に実家を売却した場合より低い金額で兄弟間の合意が成立してしまう可能性があるため、評価額と売却想定額の両方を確認してから話し合うことが大切です。
代償分割の金額を評価額だけで決めると、売却時の実勢価格との差で後からトラブルになるケースがあります。
空き家のまま放置するリスクと相続登記・特例の期限
実家を空き家のまま放置していると、評価額の確認が後回しになるだけでなく、複数の期限が迫っていることにも注意が必要です。
相続税の申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内と定められています。すでに2年が経過している場合、申告期限そのものは過ぎていても、評価額の確認や申告内容の見直しが必要になっている可能性があるため、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
相続登記についても、2024年4月1日から義務化されており、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。固定資産税だけを払い続けていても、登記を済ませていなければ義務違反の状態が続いていることになります。
さらに、空き家を売却する場合に使える「空き家にかかる譲渡所得の3,000万円特別控除」には期限があります。相続開始から3年を経過する日が属する年の12月31日までに譲渡し、耐震改修や取り壊しなどの要件を満たす必要があり、制度自体の適用期限は2027年12月31日までの譲渡とされています。父の相続開始から2年が経過している状況では、この特例を使える期間がそれほど長く残っていない点を踏まえて判断する必要があります。
空き家の3,000万円特別控除は相続開始からの経過年数で使える期間が決まるため、早めに不動産会社へ相談しておくと選択肢が広がります。
評価額を踏まえた不動産売却の検討タイミング
評価額を確認し、相続税や分け方の見通しが立ったら、実家を売却するかどうかの検討に進めます。評価額はあくまで税金や分割の基準となる金額であり、実際に売却したときの金額とは異なるため、不動産会社に査定を依頼して売却可能額を確認する必要があります。
まずは費用をかけずに目安を知りたい場合、匿名査定という方法もありますが、個別の事情を反映しない分、精度には限界があります。匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しているとおり、最終的な判断には訪問査定や複数社の比較が欠かせません。
不動産売却を進める場合の具体的な流れについては、相続した不動産を売却する流れ|手続き・税金・注意点で解説しています。評価額の確認から相続登記、売却までを一連の流れで把握しておくと、兄弟との話し合いもスムーズに進みます。
評価額と査定額の両方を並べて兄弟に示すと、話し合いの材料が増え、合意形成が進みやすくなります。
よくある質問
固定資産税評価額と相続税評価額は同じ金額ですか?
土地については異なります。固定資産税評価額は時価の70%程度、相続税評価額(路線価方式)は時価の80%程度が目安とされ、算出方法も別です。家屋については、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額として使われます。
評価額はどこで確認できますか?
毎年届く固定資産税の納税通知書に同封された課税明細書で確認できます。手元にない場合は、不動産がある市区町村の役所で固定資産税評価証明書を取得します。
評価額が分かれば相続税はいくらになるか計算できますか?
土地と家屋の評価額に加えて、預貯金など他の財産も合算し、法定相続人の数に応じた基礎控除額を差し引いた課税遺産総額を、法定相続分に応じて按分したうえで超過累進税率を適用し、その合計額が相続税の総額となります。正確な金額は税理士への相談をおすすめします。
兄弟で分け方が決まらない場合、評価額をどう使えばよいですか?
評価額を基準に、実家を相続する人が他の兄弟へ金銭を支払う代償分割や、売却した代金を分ける換価分割といった方法があります。評価額は時価より低く出やすいため、売却想定額も確認した上で話し合うことが大切です。
空き家のまま放置すると評価額や税金はどうなりますか?
評価額自体が放置によって変わるわけではありませんが、相続登記の義務化により登記をしないままだと過料の対象になる可能性があり、空き家の3,000万円特別控除にも適用期限があります。早めの確認が必要です。
相続した不動産の評価額を把握して次の判断を進める
相続した不動産の評価額は、固定資産税評価額・相続税評価額・時価という3つの異なる金額が存在し、それぞれ算出方法も目安となる水準も違います。固定資産税の納税通知書や評価証明書で固定資産税評価額を確認し、路線価方式や倍率方式で相続税評価額を求めれば、相続税の見通しと兄弟との分け方の基準が具体的になります。相続登記の義務化や空き家の特例には期限があるため、評価額の確認と並行して手続きを進める必要があります。ぜひ本記事の調べ方と計算方法を参考に、兄弟との話し合いと実家の今後の方針を進めてください。
出典
- 国税庁「路線価図・評価倍率表」
- 国税庁「財産評価基本通達」
- 総務省「固定資産税」
- 国税庁「相続税の申告と納税」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 国税庁「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」
- 国税庁 No.4155「相続税の計算」
