家の査定額はどう決まる?相場との違いと見方を解説
不動産会社から提示された家の査定額が、インターネットのポータルサイトで見た近隣の売却相場と数百万円違っていて、戸惑っている方は少なくありません。家の査定額は、不動産鑑定士が鑑定評価を行う際に準拠すべき国土交通省の不動産鑑定評価基準とは異なり、不動産会社が取引事例比較法などの考え方を参考にしながら、建物の築年数・設備・立地条件を加味して算出する独自の見積もりであり、実際に成約した価格の集まりである売却相場とは算出の起点が異なります。本記事では家の査定額の決まり方と、売却相場との違い、複数社を比較するときの見方を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 自宅の査定額が相場とどう違うのか仕組みが分からず、依頼前に基本的な見方を確認しておきたい51歳の方
- 過去に相場を大きく上回る査定額に釣られて後悔したという知人の話を聞き、査定額の根拠に警戒している方
- 複数社に査定を頼む前に、個人情報の扱われ方と適切な断り方を把握しておきたいと考えている方
家の査定額とは|不動産売却相場との違い
家の査定額とは、不動産会社が「この家が今売却市場に出たらいくらで売れそうか」を見積もった金額です。これに対して不動産売却相場は、周辺で実際に成約した家の価格を集めて出す市場全体の傾向を指します。両者は近い数字になることが多いものの、同じ金額とは限りません。
家の査定額は、1社の不動産会社が自社の経験と手持ちの取引事例をもとに出す個別の見積もりであり、担当者の判断や不動産会社の販売戦略によって差が出ます。一方で売却相場は、複数の成約事例を束ねた統計的な数字のため、個々の物件の細かい条件までは反映しません。この違いを知らずに査定額を売却相場そのものと思い込むと、実際の家の価値と提示額のズレに気づきにくくなります。
査定額は「見積もり」、売却相場は「実績の集計」と覚えておくと、提示額の見方がぶれにくくなります。
2つの査定方法|取引事例比較法と原価法で見る家の査定額
取引事例比較法で見る家の査定額
戸建ての家の査定額を出すとき、最も多く使われるのが取引事例比較法です。対象の家に近い条件(エリア・土地面積・築年数など)で実際に成約した事例を複数集め、価格を比較しながら家の査定額を調整していく方法です。土地付き戸建ての取引が多い地域ほど、この方法の精度は高くなります。
原価法・収益還元法との使い分け
一方、建物部分の価値を見るときには原価法も併用されます。同じ建物を今新築した場合の費用から、経年による劣化分を差し引いて建物の価値を算出する方法です。投資用物件では家賃収入を基準にする収益還元法も使われますが、自宅として売却する戸建てやマンションでは参考情報として触れられる程度です。投資用マンションの査定で収益還元法がどう使われるかは、投資用マンションの査定と相場|収益還元法と利回りの見方で解説しています。
どの査定方法を使ったかは査定書に記載されます。根拠が気になる場合は遠慮なく質問してください。
築年数や立地など家の査定額を左右する条件
建物の状態と設備
築年数が経つほど建物部分の価値は目減りしていきますが、同じ築年数でもリフォームの履歴や設備の状態によって家の査定額は変わります。水回りの交換歴や外壁・屋根の補修歴は、査定担当者が重視するポイントです。
立地と周辺環境
土地の価値は、駅からの距離や前面道路の幅、日当たり、周辺の生活環境によって左右されます。同じ町内でも道路の向きが違うだけで家の査定額に差が出ることがあり、これは取引事例比較法で近隣事例を参照する際の個別調整として反映されます。
家の価値を正しく把握するには、査定額の根拠となった取引事例や調整項目を査定書で確認することが大切です。東京都内で査定書を無料で入手する方法は、東京都で不動産査定書を無料で入手する方法|23区の相場も解説で解説しています。
※家の査定額を構成する要素の目安イメージ(実際の比重は不動産会社や物件ごとに異なります)
家の査定額は、近隣の取引事例に基づく基準額を土台に、築年数や設備、立地の個別条件を上乗せ・差し引きして最終的な金額にまとまる仕組みです。
リフォーム歴や修繕記録は、口頭で伝えるより資料を見せたほうが査定額に反映されやすくなります。
売却相場より高すぎる家の査定額に注意したい理由
複数社に査定を依頼すると、他社より高い家の査定額を提示してくる不動産会社が現れることがあります。これは媒介契約を取るために、根拠の薄い高値を出しているケースが含まれるためです。高い査定額に惹かれて媒介契約を結んでも、実際に売却活動を始めてから値下げを繰り返し、結果的に売却相場より長く売れ残ることもあります。
提示された家の査定額を見るときは、金額の大小だけでなく、どの取引事例を根拠にしたか、どの調整項目で加算したかを質問することが欠かせません。説明が曖昧なまま高値だけを強調する不動産会社には、慎重に向き合う必要があります。
「この金額ならすぐ売れます」という説明だけで根拠事例が出てこない場合は、一度持ち帰って考えてください。
複数の不動産会社の査定額を比べるポイント
家の査定額を1社だけで判断すると、その会社の見積もりが売却相場からどれだけ離れているか分かりません。3社前後から査定を取り、提示額の分布を見ることで、極端に高い金額や低い金額を見分けやすくなります。
比較するときは金額だけでなく、根拠にした取引事例の件数や、担当者の説明の具体性も合わせて確認してください。査定額が近い会社が複数ある場合は、その金額帯が実際の売却相場に近いと見てよい目安になります。
査定額を比べるときは、同じ条件(訪問の有無・提示資料の量)で依頼したかどうかも確認してください。
査定を申し込むときの個人情報の扱われ方
訪問査定を申し込むと、氏名・住所・電話番号・メールアドレスに加え、物件の間取りや築年数などの情報を不動産会社へ伝えることになります。不動産会社は個人情報保護法に基づき、査定目的以外に無断で情報を使わないよう管理する義務を負っています。
一括で複数社に査定を依頼する場合は、入力した情報が複数の不動産会社に共有される仕組みになっていることが多く、申し込み前にどの範囲まで共有されるかを確認しておくと安心です。
申し込みフォームの下部にある利用規約や個人情報の取り扱いに関する記載は、申し込み前に一度目を通してください。
査定を断るときの伝え方|匿名査定との使い分け
訪問査定を依頼したあと、提示された家の査定額に納得できず、その不動産会社と媒介契約を結びたくない場合は「他社の提案も合わせて検討している」と伝えれば十分です。断ったあとに営業電話が続く不安がある場合は、連絡の頻度を下げてほしいと先に伝えておくと、やり取りが落ち着きやすくなります。
そもそも氏名や連絡先を伝えずに大まかな家の価値を知りたいだけなら、匿名査定という選択肢もあります。匿名査定は住所の詳細や個人情報を伝えずに概算の金額を知る方法で、営業電話を受けたくない段階に向いています。詳しく売却を検討する段階になったら、個人情報を伝える通常の訪問査定に切り替えて、より精度の高い家の査定額を確認する流れが一般的です。匿名査定と一括査定の仕組みの違いは、匿名査定と一括査定の違い|営業電話なしで相場を知る使い分けで解説しています。
断る電話は短くて構いません。曖昧に引き延ばすより、はっきり伝えたほうが後のやり取りが楽になります。
よくある質問
家の査定額と実際の売却価格は同じになりますか
同じになるとは限りません。家の査定額はあくまで見積もりであり、実際の売却価格は買主との交渉や市場の反応によって上下します。
無料の家の査定に法的な義務は発生しますか
不動産の査定を受けただけでは媒介契約を結ぶ義務は発生しません。査定額を見て依頼先を決めなくても問題ありません。
複数社に査定を依頼すると迷惑になりますか
複数社への査定依頼は一般的な方法であり、迷惑行為にはあたりません。比較のために依頼する旨を伝えておくと、やり取りが進めやすくなります。
匿名査定の家の査定額は訪問査定より不正確ですか
匿名査定は周辺の取引事例を中心にした概算のため、建物の内部状態までは反映されません。より精度を求める場合は訪問査定への切り替えが必要です。
査定額が低い不動産会社は避けた方がよいですか
低い金額だけで判断せず、根拠にした取引事例や調整内容を確認してください。慎重な見積もりが結果的に実勢に近いこともあります。
家の査定額を理解して売却準備を進める
家の査定額は、取引事例比較法や原価法を使って不動産会社が個別に算出する見積もりであり、周辺の成約実績を集めた売却相場とは算出の起点が異なります。築年数や設備、立地の条件によって金額は変わり、根拠が曖昧な高値には注意が必要です。複数社の査定額を比較し、個人情報の扱われ方を確認したうえで、必要に応じて匿名査定と訪問査定を使い分けてください。ぜひ本記事の家の査定額の見方を参考に、納得できる不動産売却の準備を進めてください。
出典
- 国土交通省「不動産鑑定評価基準」
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」
- 不動産の鑑定評価に関する法律/日本不動産鑑定士協会連合会「不動産鑑定評価の基礎知識」
