空き家売却の流れを解説|相続後の手続きと注意点
父から相続した地方の実家が、2年経ったいまも空き家のまま残っています。固定資産税の納付書は毎年届き、帰省するたびに庭の雑草が伸び、兄弟との話し合いも進んでいません。
空き家の売却は、相続登記を済ませたうえで売却相場を確認し、不動産会社と媒介契約を結んでから買主を探す手順で進みます。相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく3年以内に済ませない場合は10万円以下の過料が科される可能性があります(2026年9月時点)。
本記事では、相続登記から空き家売却完了までの流れと、税金の特例、兄弟間での分け方を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 父の死後2年間放置してきた地方の実家について、相続登記から売却完了までの手順がまとまって分からず動けていない方
- 兄弟3人で相続した空き家を売却したいが、誰がどの手続きを担当すべきか役割分担が決まらず放置している方
- 毎年10万円近い固定資産税を払い続ける実家の処分を決めたが、解体するべきか売却するべきか判断に迷っている方
空き家を相続したまま放置するリスクと固定資産税の負担
空き家を相続した後にそのまま放置すると、固定資産税の負担が重くなっていく可能性があります。老朽化や管理不足で「空家等対策の推進に関する特別措置法」上の特定空き家等に指定され、さらに市町村長から勧告を受けると、住宅用地に適用されている固定資産税の軽減措置が外れ、税額が従来より大きく跳ね上がる場合があるためです。
税負担だけでなく、建物の老朽化が進むほど雨漏りや外壁の劣化が広がり、近隣への危険や苦情につながることもあります。空き家のまま持ち続ける期間が長くなればなるほど、売却時に修繕を求められたり、売却相場が下がったりする可能性も否定できません。放置する時間が長引くほど選択肢が狭まる点を踏まえておく必要があります。
固定資産税の通知が届いたタイミングで、放置期間と税負担の見通しを一度整理しておくと判断しやすくなります。
空き家売却の流れ|相続登記から売却完了までの手順
空き家売却は、相続登記を済ませる段階から引き渡し・確定申告まで、おおむね次の順序で進みます。相続した不動産を売却する流れで基本的な手続きの全体像を解説していますので、合わせて確認してください。
名義が登記簿上も相続人に変わっていないと売却できません
匿名査定や公的データで目安をつかむ
複数社に相談して条件と対応を比較する
空き家のため室内の清掃や管理状況の確認を行う
相続人全員の同意と署名が必要になる場合がある
譲渡所得が出た場合は翌年に確定申告を行う
最初の売却相場を調べる段階では匿名査定のデメリットと注意点も踏まえたうえで使い分けると、個人情報の扱いに不安を抱えずに売却相場の目安をつかめます。
相続登記が済んでいないと媒介契約の締結まで進めないため、最初の手続きから着手してください。
相続登記の義務化と期限|空き家売却前に必要な手続き
相続登記の義務化と罰則
相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産を相続した人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する必要があります。正当な理由なくこの期限内に登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。この義務化は2024年4月以前に相続した不動産にもさかのぼって適用されるため、何年も前に相続した実家が未登記のまま残っている場合も対象です。
相続登記が済んでいないと売却できない理由
不動産の売買契約は、登記簿上の所有者として買主に名義を移す手続きを伴います。相続人の名義に変わっていない状態では、売却に向けた媒介契約を結んでも、実際の引き渡しに進めません。兄弟のうち誰が相続するか決まっていない、または共有名義にする方針が定まっていない場合は、分け方の方向性を先に固めてから登記を申請する必要があります。
相続登記の義務化は過去に相続した空き家にもさかのぼって適用されるため、未登記のまま放置している方は早めの確認をおすすめします。
空き家を売却したときの税金と3,000万円特別控除の期限
空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税と住民税がかかります。この負担を軽くする制度として「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」があり、一定の要件を満たす空き家を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築された家屋 |
| 譲渡期限 | 相続開始があった日から3年を経過する日が属する年の12月31日まで(制度全体は2027年12月31日までの譲渡が対象) |
| 建物の状態 | 耐震改修を行うか、解体して土地のみを譲渡すること(2024年1月1日以降の譲渡では、買主が譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行った場合も対象となります) |
| 売却価格 | 1億円以下 |
出典:国税庁「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」をもとに作成
この特別控除は、相続開始から一定の年数が経つと使えなくなる点に注意が必要です。父の死後2年が経過している場合、期限まであまり時間が残っていない可能性があるため、適用の可否は税理士や税務署への確認を急いだほうが安全です。
特別控除の適用には期限があるため、相続開始から時間が経っている場合は税理士への確認を急いでください。
兄弟間で分け方が決まらない空き家の相続トラブルを防ぐ方法
共有名義のまま持つリスク
実家を兄弟の共有名義で登記すると、売却や解体を決める際に共有者全員の同意が必要になります。兄弟のうち1人でも反対すれば、売却も活用もできない状態が続き、固定資産税の負担だけが続く結果になりやすい点に注意が必要です。さらに世代が進んで共有者が増えると、意見をまとめることがより難しくなります。
代償分割・換価分割という選択肢
共有名義を避ける方法として、1人が実家を相続して他の兄弟に現金を渡す代償分割(だいしょうぶんかつ)や、売却してから代金を分ける換価分割(かんかぶんかつ)があります。空き家を売却して得た代金を兄弟で分ける換価分割は、特定の誰かが実家を所有し続ける負担を避けられる方法として選ばれることが多い分け方です。どちらの方法を選ぶにしても、相続登記を申請する前に兄弟間で分け方の方向性を固めておく必要があります。
兄弟間の合意形成が遅れるほど売却活動の開始も遅れるため、分け方の方向性だけでも早めに固めておくと動きやすくなります。
空き家の売却方法|仲介・買取・解体して売る選択肢の比較
仲介で売る
不動産会社に買主探しを依頼する仲介は、空き家をそのままの状態で売却できる可能性がある方法です。買主が見つかるまでの期間は物件の状態や立地によって変わり、空き家のままでは内覧対応や清掃の手間がかかる点も見込んでおく必要があります。
不動産会社による買取
不動産会社が直接買い取る方法は、買主を探す期間を省ける代わりに、仲介で売却する場合よりも価格が下がりやすい傾向があります。早期に処分したい事情がある場合の選択肢として検討されます。
解体して土地として売る
建物の老朽化が進んでいる場合は、解体して土地のみを売却する方法も検討対象になります。建物が残っていることで買い手が見つかりにくい空き家では、解体後のほうが売却しやすくなる場合がありますが、解体費用の負担が発生する点とのバランスで判断する必要があります。どの方法が合うかは物件ごとに異なるため、複数の不動産会社に相談して比較することが欠かせません。
解体してから売るか、現状のまま売るかで仲介手数料や売却までの見通しが変わるため、複数の不動産会社に相談して比較してください。
売却費用と期間を左右する要因|空き家の場合
仲介を通じて空き家を売却する場合、不動産会社に支払う仲介手数料は宅地建物取引業法に基づく上限額の範囲で決まります。なお、売買価格が800万円以下の物件については、2024年7月1日から低廉な空き家等の売買における特例が適用され、仲介手数料の上限が30万円(税込33万円)に引き上げられています。地方の実家など売却価格が低くなりやすい空き家では、この特例が負担の見通しに影響します。
空き家の売却までの期間は、相続登記や兄弟間の分け方の合意形成にかかる時間によって大きく変わります。登記や合意がすでに整っていれば売却活動にすぐ進めますが、未登記や意見の対立が残っている状態では、売却活動に入る前の準備段階で時間がかかりやすい点を踏まえておく必要があります。匿名査定・AI査定の精度の限界も理解したうえで、早い段階から売却相場の目安を把握しておくと、準備にかかる時間を見積もりやすくなります。
仲介手数料の特例が使えるかどうかで費用負担が変わるため、売却価格の見込みが出た段階で不動産会社に確認してください。
よくある質問
空き家を売却せず放置するとどうなりますか?
老朽化や管理不足が進んだ空き家は、特定空き家等に指定される可能性があり、指定され、さらに市町村長から勧告を受けると固定資産税の住宅用地の軽減措置が外れ、税負担が重くなる場合があります。近隣への危険や苦情につながる可能性もあります。
相続登記をしないと空き家は売却できませんか?
登記簿上の名義が相続人に変わっていない状態では、買主への名義移転ができないため空き家の売却を完了できません。相続登記は2024年4月から義務化されており、3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
兄弟で意見が合わない場合はどうすればいいですか?
話し合いで分け方の方向性が決まらない場合は、1人が実家を相続して他の兄弟に現金を渡す代償分割や、売却後に代金を分ける換価分割を検討する方法があります。合意が難しい場合は家庭裁判所の調停を利用することもできます。
3,000万円特別控除はどんな空き家でも使えますか?
すべての空き家が対象ではありません。昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、耐震改修または解体をしたうえで、相続開始から一定期間内に売却する必要があります。適用の可否は税理士や税務署に確認することをおすすめします。
解体してから売るべきか迷っています。何を基準に判断すればいいですか?
建物の老朽化の程度、立地、解体費用の見込みをもとに判断します。建物が買い手の需要を妨げている場合は解体後の土地売却が検討対象になりますが、解体費用がかかる点も踏まえて複数の不動産会社に相談することが欠かせません。
空き家売却の流れを踏まえた相続後の進め方
空き家の売却は、相続登記を済ませることから始まり、売却相場の確認、不動産会社選び、媒介契約、売買契約、引き渡しという順序で進みます。放置する期間が長くなるほど固定資産税の負担や売却相場への影響が大きくなり、3,000万円特別控除のような税制上の特例にも期限があります。兄弟間での分け方が決まらないまま共有名義で持ち続けると、売却や活用の判断自体が止まってしまう点にも注意が必要です。ぜひ本記事の空き家売却の流れを参考に、相続登記と兄弟間の話し合いから一歩を進めてください。
出典
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 国税庁「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」
- 国土交通省「低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例」(令和6年国土交通省告示第949号、令和6年7月1日施行)
- 総務省「固定資産税における住宅用地に対する課税標準の特例」

