不動産登記は自分でできる?手順と注意点をわかりやすく解説
親から引き継いだ土地の名義が、亡くなった親のままになっているという状態は珍しくありません。法務局から督促状が届くわけではないため、何年も手続きが進まずに放置されるケースも多く見られます。2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
不動産登記は、司法書士に依頼しなくても自分で法務局に申請できます。相続登記の必要書類を自分でそろえ、申請書を作成すれば、相続登記の登録免許税だけで手続きを終えられるケースもあります。一方で、共有名義や境界未確定の土地では、自分で進めるのが難しい場面も出てきます。
本記事では、不動産登記を自分で行う手順と必要書類、かかる費用の目安、専門家に頼むべき場面を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 62歳で親から引き継いだ土地の名義変更を控え、司法書士に頼む前にまず自分で登記の手順を知りたい方
- 共有名義や境界未確定が絡む相続地について、法律用語が分からないまま専門家に相談するのは気が引ける方
- 借地権付きの土地を引き継いだものの登記の全体像がつかめず、費用を抑えるため自分でできる範囲を見極めたい方
不動産登記とは|相続した土地や家を自分名義にする手続き
不動産登記は、土地や建物の所在・面積・所有者といった情報を法務局の登記簿に記録する制度です。不動産登記法に基づき、土地や家の形状や面積を記録する「表示に関する登記」と、所有者や抵当権(ていとうけん、借りたお金の担保として土地や建物に設定される権利)などを記録する「権利に関する登記」の2種類に分かれます。
親から土地や家を引き継いだ場合、登記簿上の所有者を亡くなった親から自分へ書き換える必要があります。この手続きが相続登記です。以前は相続登記に期限がありませんでしたが、2024年4月1日の法改正により義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。すでに相続した土地を名義変更していない方も対象になる点に注意が必要です。
相続登記の義務化は過去の相続分にもさかのぼって適用されます。名義変更を済ませていない土地があれば早めに確認してください。
自分で不動産登記ができるケースとできないケース
不動産登記は、書類がそろっていて関係者の意見が一致している場合、自分で申請できます。一方で、権利関係が複雑な土地では、自分で進めようとすると書類の不備や申請の取り下げを繰り返すことになりかねません。
自分で登記できるタイプの手続き
相続人が1人だけ、または相続人全員の合意がすでに得られている相続登記は、自分で進めやすい手続きです。住所や氏名が変わったときの変更登記も、戸籍謄本や住民票の取得だけで申請できるため、自分で対応する方が多く見られます。
専門家への依頼を検討したいケース
共有名義の土地で相続人同士の意見がまとまらない場合や、境界が未確定で地積測量図(ちせきそくりょうず、土地の面積や形状を測量して記録した図面)が必要な場合は、自分で進めるのが難しくなります。抵当権の設定や抹消のように金融機関が関係する登記も、専門家を通すのが一般的です。
自分で申請してみて書類に不安が出た段階で司法書士に切り替える、という進め方も可能です。
相続した土地の登記を自分で申請する手順と必要書類
相続登記を自分で進める場合、おおまかに次の5つの手順で進みます。
- 登記事項証明書を取得し、現在の登記簿上の所有者を確認する
- 亡くなった親の戸籍謄本と除票、相続人全員の戸籍謄本を収集する
- 相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書を作成し全員の実印を押す
- 固定資産評価証明書を取得し、相続登記の登録免許税を計算する
- 登記申請書を作成し、法務局の窓口・郵送・オンラインのいずれかで申請する
必要書類は、登記事項証明書、戸籍謄本、除票、固定資産評価証明書、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などです。書類に不足があると法務局から補正を求められ、手続きが数週間延びることもあります。
戸籍謄本の収集は本籍地が変わっていると時間がかかります。早めに取得を始めてください。
自分で登記する場合と司法書士に依頼する場合の費用比較
不動産登記にかかる費用は、法務局に納める相続登記の登録免許税と、専門家に依頼する場合の報酬に分かれます。自分で申請すれば、相続登記の登録免許税以外の費用をかけずに済ませられます。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 登録免許税(相続登記) | 固定資産税評価額の0.4% |
| 司法書士報酬(相続登記) | 5万円〜10万円程度 |
| 必要書類の取得費用(戸籍謄本等) | 数千円程度 |
出典:法務省「登録免許税の税額表」(2026年9月時点)をもとに作成
固定資産税評価額が高い土地や家では、登録免許税そのものが大きな金額になります。司法書士報酬を省ける分だけ自分で申請するメリットがありますが、書類の不備で何度も法務局に出向くと、時間的な負担がかえって大きくなる場合もあります。
登録免許税は固定資産税評価額から計算するため、評価証明書を取得した時点で概算が分かります。
共有名義や境界未確定の土地で登記するときの注意点
山本さんのように親から引き継いだ土地では、兄弟姉妹との共有名義や、隣地との境界が確定していないケースが少なくありません。この2つは、登記の進め方に直接関わってきます。
共有名義の土地を登記するときの注意点
共有名義の土地は、相続人全員が共有者として登記簿に記録されます。土地全体を売却するには共有者全員の合意が必要で、1人でも反対すれば売却できません。共有者の1人が認知症などで判断能力を欠く場合は、法定代理人(本人に代わって法律行為を行う権限を持つ人)を選任する必要があり、家庭裁判所の手続きが追加で発生します。
境界未確定の土地と筆界(ひっかい)の確認
筆界とは、登記簿上の土地の区画を示す線のことです。親の世代から境界標が失われている土地では、筆界が未確定のまま相続登記だけを済ませているケースもあります。登記自体は筆界が未確定でも申請できますが、将来その土地を売却するときには、土地家屋調査士による確定測量を求められるのが一般的です。隣接地を通らなければ出入りできない袋地(ふくろち、その袋地を囲む周囲の土地は囲繞地〈いにょうち〉と呼ばれます)や、他人の土地を通行・引水のために使う地役権(ちえきけん)が設定されている場合も、登記簿や公図で確認しておく必要があります。
共有名義の相続と境界確定の関係は、下の図のとおりです。
土地の所有権
共有名義+筆界未確定
親の所有権が相続登記によって共有名義に移っても、筆界が未確定のままでは土地の範囲が確定していません。売却や分割の前には、この部分を別に解決する必要があります。
境界標が見つからない土地は、登記が済んでいても測量をしないと正確な面積が分かりません。
登記を済ませた土地や家は売却できるのか
登記簿上の所有者でなければ、土地や家を売却することはできません。相続した土地を売るには、まず相続登記で自分の名義にしておくことが前提になります。相続登記が済んでいない土地は、不動産会社に相談する段階にも進めません。
登記を終えたあと、売却の第一歩として不動産会社に査定を依頼する方は多く、匿名で依頼できる査定サービスを使う方も増えています。匿名査定のメリットと注意点は匿名査定のデメリットと注意点で解説しています。また、査定書が必要になる場面は相続以外にもあり、離婚にともなう財産分与で査定書を求められることもあります。この点は離婚で不動産の査定書が必要なときの取り方と注意点で解説しています。売却時にかかる税金や手元に残る金額の目安は不動産売却にかかる税金と費用の全体像で解説しています。
相続登記を済ませないまま売却を進めることはできません。査定の相談より先に登記の状況を確認してください。
司法書士・土地家屋調査士に相談すべき場面の見極め方
自分で登記を進めた結果、書類の不備で何度も申請し直すことになる場合は、専門家に依頼したほうが時間を節約できます。特に次のような場面では、早い段階で司法書士や土地家屋調査士への相談を検討したほうが安全です。
- 相続人の中に認知症や未成年の人がいて、法定代理人の選任が必要な場合
- 共有者の1人と連絡が取れない、または意見が対立している場合
- 境界が未確定で、土地の面積そのものが確定していない場合
- 土地に抵当権や地役権など、複数の権利が設定されている場合
相続登記そのものは自分で申請できても、権利関係の整理には法律の専門知識が必要になる場面があります。司法書士は登記の申請代理を、土地家屋調査士は境界の確定測量を専門にしているため、抱えている問題に応じて相談先を分けることになります。
司法書士と土地家屋調査士は役割が異なります。登記の申請と境界の確定、どちらに困っているかで相談先を選んでください。
よくある質問
相続登記を自分で申請すると、どのくらい時間がかかりますか
必要書類がすべてそろっていれば、申請から完了まで1〜2週間程度が目安です。戸籍謄本の収集や遺産分割協議に時間がかかる場合は、全体で数か月かかることもあります。
相続登記をしないまま放置すると、どうなりますか
2024年4月1日以降は相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。義務化前(2024年4月1日より前)に発生した相続分も対象になりますが、その場合は相続を知った日と施行日(2024年4月1日)のいずれか遅い方から3年以内(最長で2027年3月31日まで)に申請すればよいとされています。
共有名義の土地は、1人だけで登記できますか
自分の持分だけを登記することはできませんが、相続人の1人が全員分をまとめて登記(保存行為)することは可能です。土地全体を売却するには共有者全員の合意が必要です。共有者と意見が分かれる場合は、早めに司法書士へ相談したほうが手続きが進みやすくなります。
境界が分からない土地でも相続登記はできますか
相続登記自体は境界が未確定でも申請できます。ただし、その土地を将来売却するときは、土地家屋調査士による確定測量を求められることが一般的です。
オンラインでの登記申請はできますか
法務局の登記・供託オンライン申請システムを使えば、自分でオンライン申請することも可能です。ただし電子証明書の準備など、窓口申請より手間がかかる部分もあります。
不動産登記を自分で行う手順のまとめ
不動産登記は、必要書類がそろっていて相続人の合意が取れている場合、自分で法務局に申請できます。一方で、共有名義や境界未確定の土地では、法定代理人の選任や確定測量など、自分だけでは解決できない論点が出てきます。相続した土地を売却するためにも、相続登記は売却の前提条件になります。ぜひ本記事の手順と注意点を参考に、自分で進められる範囲を見極めてください。
出典
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 法務省「登録免許税の税額表」
- e-Gov法令検索「不動産登記法」
- 民法第210条解説(Wikibooks)
- 三菱UFJ不動産販売「囲繞地通行権」用語集
- 登記先例(共有者の1人による保存行為としての相続登記に関する先例)
