代襲相続はどこまで?相続人の範囲を図解で解説
父の遺産分割協議を始めようとすると、先に亡くなった兄の子である甥や姪の名前を書類に入れるべきか分からず、相続登記の申請が止まったままです。兄弟のひとりが被相続人より先に死亡していた場合、民法887条2項の代襲相続(だいしゅうそうぞく)により、その子が親の代わりに相続人になります。
代襲相続の範囲は、亡くなった人が被相続人の子であれば孫・曾孫へと世代を重ねても続きますが、兄弟姉妹であれば甥や姪の世代までで止まります(民法889条2項)。相続を放棄した人の子には代襲相続は発生しません。
2026年9月時点の民法と相続登記制度にもとづき、本記事では代襲相続人の範囲を図解で示しながら、空き家の分け方と売却までの手順を解説します。
この記事はこんな方に向いています
- 2年前に父を亡くし地方の実家を相続する手続きで、代襲相続の範囲がどこまで及ぶのか分からず調べている58歳長男の方
- 兄弟の一人が既に亡くなっており、その子である甥や姪が相続人になるのか特例の期限内に確認したい方
- 相続人の範囲が想定より広がりそうで、空き家の分け方を決める前に図解で関係を整理したい方
代襲相続はどこまで及ぶのか|実家を継ぐ相続人の範囲
代襲相続とは、本来相続人になるはずだった人が被相続人より先に死亡していたり、相続人の資格を失っていたりする場合に、その人の子が代わりに相続人になる制度です。民法887条2項は、被相続人の子が相続開始前に死亡、相続欠格、相続人の廃除によって相続人でなくなったとき、その子の子(孫)が代わって相続人になると定めています。
子にあたる人の代襲は、孫が亡くなっていればさらに曾孫へと、世代を重ねても相続人の地位が引き継がれます。一方、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、民法889条2項により代襲は甥や姪の世代までで止まり、甥や姪の子には及びません。実家を継ぐ場面で代襲相続がどこまで広がるかは、亡くなった人が被相続人の「子」か「兄弟姉妹」かで判断が変わります。
子の系統か兄弟姉妹の系統かで範囲が変わるので、まず誰が亡くなっているかを家系図で書き出すと分かりやすくなります。
甥や姪は実家の相続人になるのか|代襲相続が起こる3つの場面
兄弟のひとりが父より先に亡くなっていた場合、その子である甥や姪は実家の相続人になります。代襲相続が発生する場面は、死亡・相続欠格・相続人の廃除の3つで、原因によって手続きの進み方が変わります。
相続開始前に子が死亡していた場合
被相続人の子が、被相続人より先に死亡していた場合は、その子の子(孫)がそのまま代襲相続人になります。なお被相続人の兄弟姉妹が死亡していた場合は、その子(甥・姪)が代襲相続人になります。亡くなった兄弟の分までさかのぼって戸籍謄本を取得し、代襲相続人であることを示す必要があります。
相続欠格・相続人の廃除があった場合
相続人が被相続人を殺害しようとしたなど一定の非行があり相続欠格(民法891条)に該当した場合や、被相続人の意思で相続人の廃除(民法892条)が認められた場合も、その人の子が代襲相続人になります。実家の相続では稀な事情ですが、資格を失った経緯を確認しておくと後の争いを防げます。
相続を放棄した人は、民法939条により最初から相続人でなかったものとみなされるため、その子に代襲相続は発生しません。兄弟のひとりが相続放棄をしていた場合、その子である甥や姪は実家の相続人にはならず、残りの相続人だけで遺産分割を進めます。
相続放棄をした人の子は代襲しない点を見落としやすいので、戸籍と一緒に放棄の有無も確認しておくと安心です。
相続放棄と代襲相続はどこまで違うのか|どちらを選ぶべきか
代襲相続と相続放棄は、どちらも「本来の相続人が相続できない」という点で似ていますが、仕組みは正反対です。代襲相続は相続人の資格をその子に引き継がせる制度であり、相続放棄は相続人自身が相続権を手放す意思表示です。
実家の借金や空き家の維持費を理由に相続放棄を考える場合、自分が放棄すると次の順位の人(兄弟姉妹や甥・姪)に相続権が移る点に注意が必要です。代襲相続人になるかどうかを確認せずに放棄を決めると、関係者の間で相続人が誰なのか分からなくなる恐れがあります。
相続放棄は一度受理されると撤回できないため、代襲相続人の範囲を確認したうえで判断してください。
代襲相続人が増えると実家の分け方はどう変わるか
代襲相続によって甥や姪が相続人に加わると、実家の分け方を決める遺産分割協議の参加者が増えます。面識の薄い親族同士で話し合う負担も大きくなります。
共有名義にするリスク
実家をとりあえず共有名義で登記すると、代襲相続人を含めた全員の同意がなければ売却や建物の取り壊しができません。共有者のひとりが遠方に住んでいたり、連絡が取りにくかったりすると、空き家のまま放置される期間が延びます。
代償分割・換価分割という選択肢
実家を分けにくい場合、誰かが実家を取得して他の相続人に現金を渡す代償分割(だいしょうぶんかつ)や、売却して得た代金を相続人の人数で分ける換価分割(かんかぶんかつ)という方法があります。代襲相続人が複数いるときは、売却してから分ける換価分割の方が、全員の取り分をはっきり決めやすくなります。
共有名義のまま年月が経つと、代襲相続人の子にさらに相続が発生して関係者が増え続けます。
相続登記の義務化と代襲相続人がいる場合の期限
2024年4月1日から、不動産を相続した人は相続登記を行う義務を負っています。不動産の相続を知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。
代襲相続人がいる場合は、通常の相続より戸籍の収集に時間がかかります。亡くなった兄弟の出生から死亡までの戸籍謄本と、代襲相続人である甥や姪の戸籍を合わせて取得する必要があり、必要な書類がそろうまでに数週間から数か月かかることもあります。登記の期限を過ぎそうな場合は、法定相続人であることだけを示す相続人申告登記という簡易な手続きも用意されています。
戸籍の収集は司法書士に任せると早く終わる場合が多く、期限が近いなら早めの相談をおすすめします。
代襲相続人でも使える空き家の3000万円特別控除とは
相続した家を売却したときの譲渡所得から最大3000万円を差し引ける特例は、相続人という資格に基づく制度のため、代襲相続人であっても要件を満たせば利用できます。2026年9月時点では、2027年12月31日までの譲渡が特例の対象です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前 |
| 居住状況 | 被相続人が相続開始直前まで一人で居住 |
| 売却期限 | 相続開始から3年を経過する日が属する年の12月31日まで(2027年12月31日まで) |
| 控除額 | 最大3000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で、特例の適用を受ける相続人・共有者が3人以上の場合は1人あたり2,000万円に縮小) |
出典:国税庁「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」(2026年9月時点)をもとに作成
代襲相続人が複数いて共有名義になっている場合、共有者それぞれが要件を満たせば控除を受けられる可能性がありますが、令和6年1月1日以後の譲渡では、特例の適用を受ける相続人(共有者)が3人以上になると、1人あたりの控除額は2,000万円に縮小されます。共有者が2人以下であれば、ひとりにつき3000万円の控除となります。適用の判断は個々の事情によって変わるため、税理士や国税庁の最新情報で確認してください。
期限が近づくと申請が集中しやすいので、売却を決めたら早めに不動産会社と税理士へ相談してください。
実家の売却手順|代襲相続人が複数いるときの進め方
代襲相続人を含めた相続人が決まったら、実家を売却するまでの手続きは次の順番で進みます。
戸籍謄本で代襲相続人の有無を確認
代襲相続人を含めた全員で分け方を決める
相続を知った日から3年以内
匿名査定で売却相場の目安を把握
代金を分割方法に応じて分配
図のとおり、代襲相続人が関わる実家の売却では、相続人の範囲を確定させる最初の段階に時間がかかりやすく、そこを早く終えるほど後の手続きがスムーズに進みます。
不動産の査定を申し込む段階では、代襲相続人のうち誰が対応するかを決めておくと話がまとまりやすくなります。匿名査定の仕組みや精度は匿名査定・AI査定はどこまで正確?精度の限界と賢い使い方で解説しています。
代襲相続人の連絡先が分からないまま査定だけ先に進めると、後の契約で合意が取れず時間を無駄にします。
よくある質問
代襲相続人は誰が対象になりますか?
被相続人の子が相続開始前に死亡、相続欠格、相続人の廃除によって相続人でなくなった場合、その子の子(孫)が代襲相続人になり、子であれば孫・曾孫へと続きます。兄弟姉妹が相続人でなくなった場合は、その子(甥・姪)が代襲相続人になりますが、甥・姪までで止まります。
甥や姪が代襲相続人になった場合、相続分はどうなりますか?
代襲相続人は、本来その親が受け取るはずだった相続分を引き継ぎます。代襲相続人が複数いる場合は、その相続分を人数で均等に分けます。
代襲相続人が未成年の場合、手続きはどう進めますか?
未成年の代襲相続人に代わって親権者が遺産分割協議に参加しますが、親権者自身も相続人になる場合は利益が対立するため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
代襲相続人と連絡が取れない場合はどうすればいいですか?
戸籍の附票で現在の住所を調べる方法があります。住所が分かっても連絡が取れず協議が進まない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法もあります。
相続登記を代襲相続人の分まで自分で進めることはできますか?
自分で申請することは可能ですが、代襲相続人がいる場合は戸籍の収集が複雑になりやすく、司法書士に依頼するケースが多くなっています。期限が近い場合は早めに相談してください。
代襲相続がどこまで及ぶかを確認して実家の売却を進める
代襲相続は、被相続人の子であれば孫・曾孫まで続き、兄弟姉妹であれば甥や姪までで止まります。相続放棄をした人の子には及ばず、範囲を誤って認識すると遺産分割協議や相続登記の手続きが進まなくなります。相続登記の義務化によって期限内の対応も必要になり、空き家の3000万円特別控除は代襲相続人でも要件を満たせば利用できます。ぜひ本記事の代襲相続の範囲と手順を参考に、戸籍の確認から実家の売却までを進めてください。
出典
- e-Gov法令検索「民法」(887条、889条、891条、892条、939条)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 国税庁「空き家の譲渡所得の3000万円特別控除」
- 国税庁No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
