世田谷区の空き家売却で使える補助金・控除
相続した実家が世田谷区にあって、空き家のまま数年たってしまった。
固定資産税は毎年かかるし、そろそろ売ろうかと思うものの、「売ったら譲渡所得税でかなり取られるのでは」「区の補助金や国の控除で少しでも負担を減らせないか」——そんな順番で調べ始める方は少なくありません。
結論から整理すると、空き家の売却でまず検討すべきは「補助金」よりも「控除(特例)」です。
相続した空き家には最大3,000万円の特別控除(いわゆる空き家特例)があり、条件を満たせば譲渡所得を大きく圧縮できます。
一方で、解体費や耐震改修への助成は自治体ごとに内容も予算も変わるため、区の公式情報で都度確認するのが前提になります。
この記事では、世田谷区の空き家を売るときに使える控除・特例の要件と落とし穴(特に世田谷区の相場では引っかかりやすい「1億円以下」要件)、区や東京都の助成制度の探し方、申告時に必要な書類の流れまでを、国税庁や国土交通省の公的情報をもとに整理します。
記事監修者情報

株式会社グランクルー
代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上宅地建物取引士
世田谷エリアを中心に不動産売却の実績500件以上。査定から引渡しまでの一連の実務に加え、相続・住み替え・離婚に伴う売却など、事情の異なる売主それぞれの相談に幅広く対応し、売却実務に多くの知見を持つ。
世田谷区の空き家売却で使える控除・補助金の全体像
空き家の売却でお金の負担を軽くする手段は、大きく3つに分かれます。
①譲渡所得(売却益)にかかる税金を減らす「控除・特例」、②解体や耐震改修などの工事費を補助する「自治体の助成金」、③売却で損が出たときの「譲渡損失の特例」です。
金額のインパクトが最も大きいのは①で、相続した空き家なら最大3,000万円の特別控除、自分が住んでいた家なら居住用財産の3,000万円特別控除が中心になります。
②の助成は、世田谷区や東京都が実施する老朽建築物の除却支援・耐震改修支援などが該当しますが、対象区域・建築時期・申請時期(工事契約前の申請が原則)といった条件が細かく、年度ごとに募集枠や内容が変わります。
金額や要件をこの記事で断定することはできないため、世田谷区の公式サイトまたは所管窓口で最新情報を確認してください。
「工事を先に契約してしまい、後から申請できないと分かった」というのは、助成金で最も多いつまずき方です。
③は、購入時より安く売って損が出た場合に、他の所得と相殺したり繰り越したりできる制度です。
世田谷区のような価格水準の高いエリアでは売却益が出るケースも多い
一方、バブル期に高値で取得した物件では損失が出ることもあります。
詳しくは世田谷区で使える譲渡損失の特例で整理しています。
順番としては、まず「①の控除が使えるか」を確認し、次に「②の助成で解体費を軽くできるか」を調べ、最後に「税額はいくらになるか」を試算する流れが現実的です。
助成金は「工事の契約前に申請」が基本です。
解体を急いで先に発注してしまう前に、区の窓口へ一本電話を入れておくと選択肢が残ります。
相続した空き家に使える3,000万円特別控除(空き家特例)の要件
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特別控除」は、亡くなった方が一人で住んでいた家とその敷地を相続人が売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です(租税特別措置法35条3項)。
世田谷区の相続案件で最も出番の多い特例と言ってよいでしょう。
主な適用要件
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(旧耐震基準の建物)
- 区分所有建物登記がされている建物(分譲マンション等)ではないこと
- 相続開始の直前に、被相続人が一人で居住していたこと(老人ホーム入所の場合は一定の要件で可)
- 相続時から売却時まで、事業・貸付・居住に使われていないこと
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 家屋を耐震基準に適合するようリフォームして売る、または家屋を取り壊して敷地を売ること
2024年1月1日以後の譲渡については、売却後(譲渡の翌年2月15日まで)に買主が耐震改修または取り壊しを行った場合も対象に含められるよう見直されました。
一方で、相続人が3人以上いる場合は、1人あたりの特別控除額の上限が2,000万円に縮小されます。
適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。
要件・期限は改正されることがあるため、国税庁のタックスアンサーで最新の内容を確認してください。
実務で見落とされやすいのは「貸していないこと」です。
空き家のまま維持するのは負担が大きいので、一時的に人に貸したり駐車場として使ったりすると、それだけで適用外になり得ます。
また、区分所有登記のあるマンションは対象外なので、相続した物件が集合住宅の一室である場合は、この特例ではなく別の手段(取得費加算など)を検討します。
「3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限は、思っているより早く来ます。
相続から2年が過ぎている方は、売却の段取りを先に確認しておくと安心です。
世田谷区の空き家売却で「1億円以下」要件に注意
空き家特例には「売却代金1億円以下」という上限があります。
全国的にはあまり意識されない要件ですが、世田谷区では現実的な論点になります。
区内の取引データを見ると、土地(宅地)の価格の中央値は1億円に近い水準です。
| 物件種別 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 | 面積の中央値 |
|---|---|---|---|
| 中古マンション | 約5,600万円 | 約93.8万円/㎡ | 約60㎡ |
| 一戸建て(土地建物) | 約8,900万円 | — | 約100㎡ |
| 土地(宅地) | 約9,200万円 | 約80.0万円/㎡ | 約120㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」取引価格情報・成約価格情報(2021〜2025年/世田谷区、18,253件)をもとに作成。
個別価格は立地・築年数・状態により変動します。
一戸建て(土地建物)の中央値が約8,900万円、土地(宅地)の中央値が約9,200万円ですから、成城・上野毛・二子玉川周辺のような敷地の広いエリア、あるいは面積が中央値の約120㎡を大きく超える土地では、売却代金が1億円を超えて特例を使えないケースが出てきます。
区内でも烏山・砧地域と玉川地域では単価が異なるため、「世田谷区だから一律に高い/低い」と決めつけずに、自分の物件の想定価格を先に把握することが重要です。
価格全体の水準が上がってきていることも押さえておきたい点です。
中古マンションの中央値の推移を見ると、この数年は上昇傾向が続いています。
| 年 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 |
|---|---|---|
| 2021年 | 約5,200万円 | 約85.0万円/㎡ |
| 2022年 | 約5,400万円 | 約90.0万円/㎡ |
| 2023年 | 約5,700万円 | 約96.8万円/㎡ |
| 2024年 | 約5,800万円 | 約100.0万円/㎡ |
| 2025年 | 約6,000万円 | 約103.7万円/㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
ここで示しているのは売り出し価格(広告価格)ではなく、実際に取引が成立した価格をもとにした中央値です。
平均値は極端に高い取引に引っ張られるため、実感に近い目安としては中央値のほうが使いやすいと考えられます。
価格が上向いている局面では、想定より高く売れて1億円を超え、特例が使えなくなることもあり得ます。
売り出し価格を決める段階で、税理士や仲介会社と要件を突き合わせておくのが安全です。
自分の物件の水準感は世田谷区でマンション売却、手元に残る金額はもあわせて確認してください。
世田谷区では「1億円以下」の壁が現実に効いてきます。
敷地が広めのご実家は、価格を決める前に要件を確認しておくと判断がぶれません。
自分が住んでいた家を売る場合の3,000万円控除と軽減税率
空き家といっても、「相続した親の家」ではなく「自分が住んでいたが引っ越して空いている家」というケースもあります。
この場合は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(租税特別措置法35条1項)が使えます。
住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件で、その間に人に貸していても適用の対象になり得ますが、家屋を取り壊した場合は別途期限の制限があります。
さらに、所有期間が10年を超えるマイホームであれば、軽減税率の特例を重ねて使える場合があります。
3,000万円控除後の課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について、所得税10.21%+住民税4%=14.21%の税率が適用されます(6,000万円超の部分は20.315%)。
通常の長期譲渡所得(所有期間5年超)は20.315%、短期譲渡所得(5年以下)は39.63%ですから、税負担の差は小さくありません。
注意したいのは、この居住用財産の3,000万円控除と、相続空き家の3,000万円控除は別の制度であり、同一年に併用する場合は合わせて3,000万円が上限になる点です。
また、住宅ローン控除を新居で使う予定がある場合、譲渡側の特例と併用できない組み合わせがあります。
買い替えを伴うときは、順序と年をまたぐタイミングを含めて事前に検討しておくと安心です。
税額の計算方法は世田谷区で家を売ると税金は?譲渡所得税の計算で具体的に確認できます。
買い替えでは、新居のローン控除と売却側の特例のどちらを取るかで結果が変わります。
契約前に両方を並べて比較しておくのがおすすめです。
相続税の取得費加算・譲渡損失の特例との使い分け
相続した不動産で相続税を納めている場合、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」(措法39条)も選択肢になります。
支払った相続税のうち、その不動産に対応する分を取得費に加算できる制度で、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの譲渡が対象です。
重要なのは、空き家の3,000万円特別控除と取得費加算の特例は選択制(併用不可)だという点です。
どちらが有利かは、①売却益の大きさ、②納めた相続税額、③取得費が判明しているかで変わります。
世田谷区のように地価水準が高いエリアでは相続税額も大きくなりやすく、取得費加算のほうが有利になるケースもあります。
逆に、昭和期に取得して取得費がほとんど分からない土地では、3,000万円控除の効果が大きくなりやすいと考えられます。
両方で試算して比較するのが確実です。
反対に、取得価格を下回って売却して損失が出る場合は、譲渡損失の特例(居住用財産に限られます)の検討になります。
相続した空き家は「自分の居住用」ではないため、この特例の対象外となる点に注意してください。
損益の見通しは譲渡損失の特例の記事、費用全体の内訳は世田谷区の不動産売却でかかる税金・費用と仲介手数料の記事で確認できます。
3,000万円控除と取得費加算は「どちらか一方」です。
相続税の申告書を手元に用意して、二通りで試算してから決めましょう。
世田谷区・東京都の空き家関連の助成制度の探し方と注意点
解体費や耐震改修費への助成は、国の税制と違って自治体ごとに内容が異なります。
世田谷区でも、老朽化した建築物の除却や耐震化、空き家の利活用に関する支援メニューが用意されていますが、対象となる区域(不燃化を進める地区や狭あい道路沿いなど)、建物の建築時期、耐震診断の結果、申請の時期といった条件が細かく設定されているのが通例です。
予算枠に達すると年度途中で受付を終える場合もあります。
確認の手順としては、①世田谷区の公式サイトで「空き家」「除却」「耐震」といったキーワードから該当年度の要綱を探す、②所管課(防災・建築関係の窓口)に物件の所在地と建築年を伝えて対象になるか照会する、③東京都の耐震化・不燃化関連の支援制度も併せて確認する、という流れが効率的です。
金額や割合をこの記事で示すことは避けますが、いずれの制度も「工事の契約・着手前に申請が必要」という点はほぼ共通しています。
もう一点、税の特例との関係も押さえておきたいところです。
空き家特例で建物を取り壊して敷地を売る場合、解体費は譲渡費用として控除の対象になり得ます。
ただし助成金を受け取った場合の取扱いは、金額や区分によって処理が変わるため、確定申告の前に税理士へ確認するのが安全です。
老朽化が進んだ家をそのまま売る選択肢もあり、判断材料は築40年・50年の古い家は世田谷区で売れる?や雨漏りする家は修繕せず売却できるかで整理しています。
なお、親から受け継いだ家を自分の代で手放すことに、どこか申し訳なさを感じる方は少なくありません。
ただ、空き家を放置すれば老朽化と管理不全のリスクが進み、特定空家等に認定されると固定資産税の住宅用地特例が外れる可能性もあります。
手放す判断は、家を守るための現実的な選択肢のひとつだと考えて差し支えありません。
助成金は年度ごとに内容が変わるので、去年の情報のままで判断しないことが大切です。
まず所在地と建築年を伝えて対象か照会してみてください。
空き家の3,000万円控除を使うための必要書類と申告の流れ
特例は自動では適用されません。
売却した翌年の確定申告で、必要書類を揃えて申告することが条件です。
空き家特例の場合、一般に次のような書類が必要になります。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 被相続人居住用家屋等確認書(物件所在地の市区町村=世田谷区が発行)
- 売買契約書の写し(売却代金が1億円以下であることの確認)
- 登記事項証明書等(建築年月日、相続による取得、家屋の取壊しが分かるもの)
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書(耐震改修して売る場合)
- 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合は、その事実を示す書類
手間がかかるのは「被相続人居住用家屋等確認書」です。
区役所へ申請して交付を受ける書類で、電気・水道の使用中止日を示す資料や、空き家であったことを確認できる書類の提出を求められることがあります。
申請から交付までに日数がかかるため、売却の目処が立った段階で必要書類の一覧を取り寄せておくと、申告期限に慌てません。
スケジュールとしては、売却した年の翌年2月16日〜3月15日が申告期間です。
遠方にお住まいで区役所へ行きづらい場合も、郵送での申請に対応していることが多いので、事前に窓口へ確認しておくとよいでしょう。
申告の実務は世田谷区で不動産を売った後の確定申告のやり方で手順を追えます。
確認書の取得には時間がかかります。
売買契約を結んだら、決済を待たずに区役所へ必要書類を問い合わせておくと余裕を持てます。
世田谷区の空き家売却と補助金・控除に関するよくある質問
Q 相続した空き家がマンションの一室でも3,000万円控除は使えますか?
A 空き家特例は、区分所有建物登記がされている建物を対象外としています。
分譲マンションの一室は原則として適用外です。
相続税を納めているなら、取得費加算の特例の検討に切り替えるのが現実的です。
Q 相続から3年以上経ってしまいました。
もう控除は使えませんか?
A 空き家特例は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡が要件です。
これを過ぎると適用できません。
取得費加算の特例にも期限があるため、期限が近い方は早めに専門家へ相談してください。
Q 世田谷区の土地は1億円を超えることもありますが、その場合はどうなりますか?
A 売却代金が1億円を超えると空き家特例は使えません。
世田谷区の土地(宅地)の中央値は約9,200万円で1億円に近い水準のため、価格設定の前に要件を確認しておくことが大切です。
分割して売る場合の判定も含め、税理士への確認をおすすめします。
Q 解体費用の助成金と3,000万円控除は両方使えますか?
A 制度上の目的が異なるため、両方の要件を満たせばそれぞれ検討できます。
ただし助成金を受けた場合の税務上の取扱いや、解体費を譲渡費用として計上する範囲は個別判断になるので、申告前に確認してください。
Q 空き家を売る前に一時的に賃貸に出しても控除は使えますか?
A 空き家特例は、相続時から売却時まで事業・貸付・居住に使われていないことが要件です。
短期間でも賃貸に出すと適用できなくなる可能性が高いので、売却を予定しているなら賃貸は避けるのが安全です。
Q 相続人が3人いる場合、控除額はどうなりますか?
A 相続人が3人以上の場合、1人あたりの特別控除額の上限は2,000万円になります(2人以下なら3,000万円)。
共有で売る場合は、持分ごとに要件と控除額を確認する必要があります。
Q 遠方に住んでいますが、申請や手続きは現地に行かないと進められませんか?
A 被相続人居住用家屋等確認書の申請は郵送に対応している場合が多く、査定や打ち合わせもオンラインや書面で進められる部分があります。
決済など立ち会いが必要な場面は限られるため、事前に段取りを組んでおけば帰省回数を抑えられます。
世田谷区の空き家売却で押さえるポイント
世田谷区の空き家売却で効果が大きいのは、相続空き家の3,000万円特別控除です。
昭和56年5月31日以前建築・区分所有でない・相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで・売却代金1億円以下といった要件をひとつずつ確認し、取得費加算の特例とどちらが有利かを試算してから選ぶのが基本の流れになります。
世田谷区は土地(宅地)の中央値が約9,200万円、一戸建てが約8,900万円という水準で、価格が上向く局面では「1億円以下」の要件に触れやすいことを意識しておきたいところです。
次の一歩としては、①自分の物件の想定価格を成約データや机上査定で把握する、②相続開始日から逆算して期限に余裕があるか確認する、③世田谷区の助成制度の対象になるか窓口へ照会する、の3点から着手すると迷いにくくなります。
売却で手元にいくら残るかを先に見ておくと、解体するかそのまま売るかの判断もしやすくなります。
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控除の要件と期限は、売り方を決める前に押さえておくと選択肢が広がります。
まずは価格の目安と相続開始日から、一緒に整理していきましょう。
出典・参考
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(取引価格情報・成約価格情報/2021〜2025年・世田谷区)
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例
- 国税庁 タックスアンサー No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 世田谷区公式ホームページ(空き家・除却・耐震関連の助成制度/年度ごとの最新要綱を確認)
- 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)
