世田谷区の旧耐震の家を売却するには|地震対策
「うちは昭和の家だから、地震が来たら危ないと言われている。
でも、そんな家を売りに出していいのだろうか」——世田谷区で親から受け継いだ家、あるいは長く住んできた我が家について、そう迷う方は少なくありません。
耐震性の話になると、売却の相談が後ろめたく感じられてしまうものです。
けれど、旧耐震基準の家を売ることは、後ろめたい行為ではありません。
むしろ、住む人がいないまま古い木造家屋を放置するほうが、周囲にも自分にもリスクが残ります。
旧耐震の建物は世田谷区に数多く残っており、実際に売買も成立しています。
大切なのは「隠さずに、正しい売り方を選ぶ」ことです。
この記事では、旧耐震基準とは何か、世田谷区で旧耐震の家を売るときに価格がどう見られるのか、現況のまま売る・耐震改修する・解体して土地として売るという選択肢の違い、使える税の特例、買主への伝え方までを、国土交通省の公的データを交えて整理します。
まず情報だけ知りたい、という段階の方に向けて書いています。
記事監修者情報

株式会社グランクルー
代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上宅地建物取引士
世田谷エリアを中心に不動産売却の実績500件以上。査定から引渡しまでの一連の実務に加え、相続・住み替え・離婚に伴う売却など、事情の異なる売主それぞれの相談に幅広く対応し、売却実務に多くの知見を持つ。
世田谷区の旧耐震の家とは|1981年5月31日以前の建築確認が分かれ目
旧耐震基準とは、建築基準法の耐震規定が大きく改正される前の基準を指します。
分かれ目は建築確認を受けた日で、昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けた建物が「旧耐震」、同年6月1日以降が「新耐震」と呼ばれます。
判断の基準は「完成日」ではなく「建築確認日」である点が見落とされがちで、竣工が1981年秋でも確認申請が春であれば旧耐震にあたります。
建築確認済証や検査済証、登記事項証明書の新築年月日で確認します。
木造住宅の場合はもう一段階あり、2000年(平成12年)6月にも接合部の金物や基礎の仕様に関する改正が行われています。
そのため「1981年より前」「1981年〜2000年」「2000年以降」の三段階で見られることが多く、旧耐震の木造は最も慎重に評価されます。
世田谷区には、戦後から高度経済成長期にかけて形成された住宅地が広く残り、下北沢・三軒茶屋・太子堂の周辺のように細い道路に木造住宅が密集する地域もあります。
こうしたエリアでは、建物単体の耐震性に加えて、道路付けや接道状況もあわせて評価されます。
まずは「自分の家がどの区分にあたるか」を書類で押さえるところからで十分です。
建築確認日は登記や確認済証で確認できます。
書類が見当たらない場合も、区の建築計画概要書の閲覧などで手がかりが得られることがありますよ。
世田谷区で旧耐震の家は売れるのか|売却相場から見る現実
「旧耐震だから売れないのでは」と不安になる方は多いのですが、世田谷区では土地そのものに強い需要があり、建物の価値がゼロに近い評価でも取引は成立しています。
実際の成約データで区全体の水準を見ておきましょう。
| 物件種別 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 | 面積の中央値 |
|---|---|---|---|
| 中古マンション | 約5,600万円 | 約93.8万円/㎡ | 約60㎡ |
| 一戸建て(土地建物) | 約8,900万円 | — | 約100㎡ |
| 土地(宅地) | 約9,200万円 | 約80.0万円/㎡ | 約120㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」取引価格情報・成約価格情報(2021〜2025年/世田谷区、18,253件)をもとに作成。
個別価格は立地・築年数・状態により変動します。
ここで注目したいのは、土地(宅地)の中央値が約9,200万円、一戸建て(土地建物)の中央値が約8,900万円と、大きくは離れていない点です。
世田谷区では価格の多くを土地が占めており、古い建物が建っていること自体が価格の決定打にはなりにくい、と読み取れます。
旧耐震の家であっても、買主が「土地として使える」と判断できれば検討の対象になります。
なお、これらは広告に出ている売り出し価格ではなく、実際に取引が成立した成約ベースの数字です。
売り出し価格は相場より高めに設定されることが多いため、手取りの目安としては成約ベースのほうが現実に近くなります。
また平均値は一部の高額取引に引っ張られるため、実感に近い中央値を使っています。
「古い家だから値段がつかない」と決めつけて安く手放してしまう前に、土地としての評価をしっかり確認してみてください。
世田谷区の不動産価格の推移(2021〜2025年)と売り時の考え方
旧耐震の家をお持ちの方から「もう少し様子を見たほうがいいのか」と聞かれることがあります。
判断材料として、区全体の価格の動きを確認しておきます。
| 年 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 |
|---|---|---|
| 2021年 | 約5,200万円 | 約85.0万円/㎡ |
| 2022年 | 約5,400万円 | 約90.0万円/㎡ |
| 2023年 | 約5,700万円 | 約96.8万円/㎡ |
| 2024年 | 約5,800万円 | 約100.0万円/㎡ |
| 2025年 | 約6,000万円 | 約103.7万円/㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
中央値は2021年の約5,200万円から2025年の約6,000万円へと推移しています。
市況が動く要因は金利や需給など複数あるため先行きを断定はできませんが、少なくとも「古い家だから待てば待つほど良い」という関係ではない点は押さえておきたいところです。
建物は年々傷み、空き家のままなら固定資産税や維持管理の負担も続きます。
旧耐震の木造住宅は、時間が味方になりにくい資産だと考えておくのが現実的です。
築年数がかなり経っている場合の考え方は築40年・50年の古い家は世田谷区で売れる?もあわせてご覧ください。
相場が上がっている局面でも、建物の劣化と維持費は別に進みます。
焦る必要はありませんが、判断を先送りにするコストは意識しておきたいですね。
世田谷区で旧耐震の家を売却する3つの方法(現況・耐震改修・解体)
旧耐震の家の売り方は、大きく三つに分かれます。
どれが正解ということはなく、費用をかけられるか、時間をかけられるか、手間をどこまで負えるかで選び方が変わります。
1. 現況(古家付き土地)のまま売る
手を加えず、そのままの状態で売る方法です。
追加費用がかからず、解体や工事の手配も不要なので、遠方にお住まいの方や、これ以上お金をかけたくない方に向きます。
世田谷区のように土地需要が厚いエリアでは、建替え前提の実需層や事業者が買主になることが多く、建物の耐震性能そのものは価格に反映されにくくなります。
ただし、買主が住宅ローンや税の優遇を使いにくい分、買主層は絞られます。
2. 耐震診断・耐震改修をしてから売る
診断と補強工事を行い、耐震基準に適合していることを証明できる状態にしてから売る方法です。
買主にとっては安心材料になり、住宅ローン控除など税の要件を満たしやすくなる場合があります。
一方で、工事費用が売却価格に同額で上乗せされるとは限らず、費用倒れになる可能性もあります。
実施する場合は、工事前に「その費用が価格にどこまで反映されそうか」をしっかり試算してから決めてください。
3. 解体して更地(土地)として売る
建物を取り壊し、土地として売る方法です。
買主が計画を立てやすく、間口が広がる一方、解体費が先に出ていくこと、更地にすると住宅用地の固定資産税の軽減が外れることに注意が必要です。
狭い前面道路に面している場合は解体・搬出の手間が増えることもあります。
相続した空き家では、税の特例との関係で「解体するか、買主に耐震改修してもらうか」で扱いが変わるため、次の章もあわせて確認してください。
雨漏りなど建物の不具合が重なっている場合は世田谷区で雨漏りする家は売れる?修繕せず売却、家財が残ったままの場合はゴミ屋敷を世田谷区で売却|片付けずに売る方法も参考になります。
解体も改修も、先にお金が出ていく判断です。
着工前に「現況のまま」と「手を入れた場合」の見込みを並べて比べることをおすすめします。
旧耐震住宅の売却で使える税の特例と耐震改修の支援制度
旧耐震かどうかは、税や制度の面でも意味を持ちます。
代表的なものを整理します。
相続した空き家の譲渡所得の特別控除:被相続人が一人で住んでいた家屋などの要件を満たす場合、相続した家を売却したときの譲渡所得から一定額を控除できる特例があります。
この特例は、対象家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであることが要件のひとつで、まさに旧耐震の家が対象です。
原則として、耐震改修をして売るか、取り壊して売る必要があり、要件・適用期限・手続きは細かく定められています。
適用の可否はしっかり国税庁の案内や税務署・税理士に確認してください。
買主側の住宅ローン控除:中古住宅の住宅ローン控除は、建築年による要件があり、それ以前の建物では耐震基準適合証明書などの書類が必要になります。
旧耐震の家は買主が控除を使いにくく、購入希望者が絞られる一因になります。
裏を返せば、耐震性を証明できる状態にできれば、検討してもらえる買主の幅は広がります。
世田谷区の耐震化支援:世田谷区では、木造住宅を中心に耐震診断や耐震改修、除却(取壊し)に関する支援制度が用意されています。
内容・金額・対象要件・受付期間は年度ごとに変わるため、しっかり区の公式サイトの最新情報を確認してください。
売却前に使えるかどうかは条件次第ですが、「まず診断だけ受けてみる」という進め方もあります。
税の特例は要件も期限も細かく、売り方の順番次第で使えなくなることがあります。
売却の段取りを決める前に確認しておくと安心です。
耐震性は買主にどこまで伝えるべきか|告知と契約不適合責任
「耐震性が低いことを言えば売れなくなるのでは」と迷う気持ちは自然なものです。
しかし、建物の状態や耐震性に関わる事実を伏せて売ることは、後々のトラブルの種になります。
宅地建物取引業法では、取引に重要な影響を及ぼす事項について故意に事実を告げない、あるいは事実と異なることを告げる行為が禁じられています。
売主自身も、契約後に契約不適合責任を問われる可能性があります。
むしろ実務では、旧耐震であることを最初から明示したうえで「建替え・リノベーション前提の古家付き土地」として売り出すほうが、話が早く進むことが多いものです。
世田谷区の買主には、土地を取得して自分たちの計画で建て直したいという層が一定数います。
その層にとって、建物の耐震性能は購入判断の障害になりにくいからです。
伝えるべきことを伝えたうえで、価格と条件を調整する。
この順番を守るほうが、結果として売主の安心につながります。
既に雨漏りやシロアリ、傾きなどの不具合を把握している場合も、同じ考え方で契約書・付帯設備表に反映しておきます。
不具合を先に開示しておくと、値引き交渉の材料にはなっても、引渡し後の紛争は避けやすくなります。
隠すより書き残すほうが売主を守ります。
世田谷区のエリア別|旧耐震の家の評価が変わるポイント
同じ旧耐震でも、どこに建っているかで見られ方は変わります。
世田谷区内の主なエリアの傾向を整理します。
成城・上野毛・二子玉川周辺:区画が整い、土地面積の大きい住宅地が多いエリアです。
建物が古くても土地の評価が明確で、建替え前提の実需層の検討が入りやすい傾向があります。
ただし敷地が広い分、解体費や測量費の負担も大きくなります。
三軒茶屋・下北沢・太子堂・北沢周辺:木造住宅が密集し、前面道路が狭い区画が点在します。
建築基準法上の道路の扱い(幅員4m未満の道路に接する場合のセットバック)や、再建築時の制約が価格に影響することがあるため、旧耐震というより「建替えができる土地か」が焦点になりやすいエリアです。
経堂・千歳船橋・用賀・桜新町周辺:小田急線・東急田園都市線沿線の生活利便性の高い住宅地で、駅からの距離と敷地規模が評価を左右します。
細分化された宅地では、面積が小さいことが建替え計画の制約になる場合があります。
千歳烏山・喜多見・祖師ヶ谷大蔵周辺:区の西側・北西側で、比較的手が届く価格帯を探す層の検討も入りやすいエリアです。
古家付きのまま売るか更地にするかで、反応する買主層が変わることがあります。
いずれのエリアでも、旧耐震かどうか以上に「土地としてどう使えるか」が判断の軸になります。
接道・幅員・用途地域・防火規制を先に確認しておくと、方針が決めやすくなります。
道が狭い区画では、解体重機が入るかどうかで費用も変わります。
エリアの事情は現地を見ないと分からない部分が多いです。
旧耐震の家を売る前に確認したい注意点とトレードオフ
最後に、判断を誤りやすい点を正直に挙げておきます。
ひとつめは、先に工事や解体をしてしまうことです。
良かれと思って耐震改修や解体を済ませたあとで、「その費用が価格に反映されなかった」「税の特例の要件を満たさない順番だった」となるケースがあります。
費用が出ていく行為は、査定と特例の確認の後に回すのが安全です。
ふたつめは、周囲に知られたくないという気持ちと、価格・スピードの関係です。
看板を出さず、掲載範囲を絞って売れば知られにくくなりますが、買主に届く範囲も狭くなります。
買取であれば短期間で確実性は高まる一方、仲介での売却に比べて価格は下がるのが一般的です。
この二つを完全に両立させる方法はありません。
どちらを優先するかを先に決めておくと、迷いが減ります。
みっつめは、相続人が複数いる場合の合意形成です。
旧耐震の家は「残すか、直すか、壊すか」で意見が割れやすく、話がまとまらないまま年月が過ぎることがあります。
方針を話し合う材料として、まずは価格の目安と選択肢を全員が同じ資料で見られる状態にするのが近道です。
遠方から進める場合の手順は遠方に住みながら世田谷区の実家を売却する方法にまとめています。
住宅ローンが残っている自宅を売る場合は、残債と売却価格の関係が判断の前提になります。
住宅ローンが払えない…世田谷区で家を売り完済、オーバーローンでも世田谷区の家は売れる?任意売却もあわせてご確認ください。
「知られたくない」と「高く早く」は、どこかで折り合いをつける必要があります。
優先順位さえ決まれば、売り方は選びやすくなります。
世田谷区の旧耐震の家の売却に関するよくある質問
Q 旧耐震かどうかは、どこで確認できますか?
A A. 建築確認済証や検査済証に記載された建築確認日で判断します。
昭和56年(1981年)5月31日以前に建築確認を受けた建物が旧耐震にあたります。
書類が見つからない場合は、登記事項証明書の新築年月日や、区で閲覧できる建築計画概要書などが手がかりになります。
Q 旧耐震だと、世田谷区でも買い手はつかないのでしょうか?
A A. 世田谷区では価格に占める土地の割合が大きく、土地(宅地)の中央値が約9,200万円、一戸建て(土地建物)の中央値が約8,900万円と大きく離れていません(2021〜2025年の成約データ)。
建替え前提で検討する買主が一定数いるため、旧耐震であること自体が売却を不可能にするわけではありません。
Q 耐震改修をしてから売ったほうが高く売れますか?
A A. 買主の安心材料にはなりますが、工事費用がそのまま価格に上乗せされるとは限りません。
世田谷区のように建替え需要が厚いエリアでは、改修せず古家付き土地として売るほうが合理的な場合もあります。
工事前に、現況で売った場合との比較を行うことをおすすめします。
Q 解体して更地にしてから売るべきですか?
A A. 買主が計画を立てやすくなる一方、解体費が先に出ていき、更地にすると住宅用地に対する固定資産税の軽減が外れます。
相続した空き家の税の特例を使う場合は、取壊しや耐震改修のタイミングが要件に関わるため、順番を決める前に確認が必要です。
Q 耐震性が低いことを買主に伝えなくてはいけませんか?
A A. 取引の判断に影響する事項を伏せることは望ましくありません。
宅地建物取引業法では重要な事項について事実を告げない行為が禁じられており、売主も引渡し後に契約不適合責任を問われる可能性があります。
旧耐震であることを明示して売り出すほうが、結果として安全です。
Q 相続した旧耐震の実家に使える税の特例はありますか?
A A. 相続した空き家を売却したときの譲渡所得の特別控除があり、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることが要件のひとつです。
ほかにも被相続人の居住状況や売却期限など細かな要件があるため、国税庁の案内を確認し、税務署や税理士に相談してください。
Q 近所に知られずに旧耐震の家を売ることはできますか?
A A. 看板を出さない、写真や掲載範囲を調整するなど、知られにくくする方法はあります。
ただし買主に届く範囲が狭まる分、価格や期間に影響が出ることがあります。
「知られなさ」と「価格・スピード」は完全には両立しないため、優先順位を先に決めておくとよいでしょう。
世田谷区の旧耐震の家を売るために、まず押さえるべきこと
旧耐震の家は、建物としての評価は厳しく見られます。
それでも世田谷区では、土地(宅地)の中央値が約9,200万円、一戸建て(土地建物)が約8,900万円と、価格の多くを土地が支えています。
中古マンションの中央値も2021年の約5,200万円から2025年の約6,000万円へと推移しており、「古いから売れない」と最初から諦める必要はありません。
次の一歩としておすすめしたいのは、①建築確認日を書類で確認する、②接道・幅員などの土地条件を確認する、③現況のまま売った場合の価格の目安を先に把握する、の三つです。
工事や解体の判断は、その後で十分に間に合います。
相続が絡む場合は、税の特例の要件を確認してから順番を決めてください。
関連する状況の記事もあわせてご覧ください。
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古い家を手放すことは、後ろめたいことではありません。
まずは書類の確認と価格の目安集めから、静かに始めていきましょう。
出典・参考
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(取引価格情報・成約価格情報/2021〜2025年・世田谷区)
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 No.1213 住宅を新築又は購入した場合(住宅借入金等特別控除)
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)
- 建築物の耐震改修の促進に関する法律(e-Gov法令検索)
- 建築基準法(e-Gov法令検索)
- 世田谷区公式ホームページ(耐震診断・耐震改修等の支援制度/最新の要件・受付状況は区の案内をご確認ください)
