世田谷区の相続不動産、相続登記しないと売れない
親の家を相続したものの、名義はまだ亡くなった親のまま。
「そのうちやろう」と思いながら数年が過ぎてしまった——世田谷区でご実家を引き継いだ方から、こうした話を聞くことは少なくありません。
売ろうと不動産会社に相談して初めて「相続登記が済んでいないと売買できません」と言われ、戸惑う方もいます。
後回しにしてしまったこと自体は、責められるようなことではありません。
葬儀や手続きに追われ、兄弟とも話しにくく、気持ちの整理がつかないまま時間が経つのは自然なことです。
ただ、2024年4月から相続登記は義務化され、放置し続けると過料の対象にもなり得ます。
逆に言えば、登記さえ通せば売却の道は普通に開けます。
この記事では、なぜ相続登記をしないと売れないのかという法律上の理由、世田谷区での実際の売却価格の目安、登記に必要な書類と費用、兄弟間で話がまとまらない場合の考え方までを、順を追って整理します。
まずは「何から手をつければいいか」を掴んでいただくことを目的にしています。
記事監修者情報

株式会社グランクルー
代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上宅地建物取引士
世田谷エリアを中心に不動産売却の実績500件以上。査定から引渡しまでの一連の実務に加え、相続・住み替え・離婚に伴う売却など、事情の異なる売主それぞれの相談に幅広く対応し、売却実務に多くの知見を持つ。
世田谷区で相続した不動産は、相続登記をしないと売却できない
結論から言うと、亡くなった方の名義のままでは不動産を売ることはできません。
不動産の売買は「登記名義人が売主」であることが前提だからです。
買主は代金を払う以上、しっかり自分名義へ移せることを確認します。
売主欄が故人のままでは、司法書士も所有権移転登記を実行できず、金融機関も買主の住宅ローンを実行しません。
結果として契約自体が成立しないのです。
つまり、相続不動産の売却は「相続登記(名義を相続人へ移す手続き)→ 売買契約 → 引渡し・所有権移転」という順序になります。
相続登記は売却の前提条件であって、売れてから考えるものではありません。
ここを知らずに媒介契約の話まで進んでしまい、慌てて登記に戻る方もいます。
もうひとつ押さえておきたいのが、2024年4月1日から相続登記が義務化された点です。
相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければならず、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象となります。
しかもこの義務は、2024年4月より前に発生した相続にも適用されます。
「親が10年前に亡くなって、そのまま」というケースも対象になり得るということです。
世田谷区は住宅地としての需要が厚く、相続した物件が「そもそも売れないのでは」という心配は比較的小さいエリアです。
だからこそ、売れる状態に整えるための登記を先に片付けておく意味があります。
「売れてから登記でいいのでは」と考える方は多いのですが、順序が逆になると契約が進みません。
売却をお考えなら、まず名義の状態を確認するところからで大丈夫です。
相続登記を放置するとどうなる?世田谷区でよくあるリスク
登記を先延ばしにすると、時間の経過とともに手続きの難易度が上がっていきます。
最も大きいのが、相続人が増えてしまう問題です。
たとえば父が亡くなり、相続人が母と子ども2人だったとします。
この段階なら3人で話し合えば済みます。
ところが登記をしないまま母が亡くなり、さらに子の1人も亡くなると、その配偶者や子(孫)へと権利が枝分かれしていきます。
これを数次相続と呼びます。
相続人が10人を超え、面識のない親戚の実印と印鑑証明書が必要になる——という状態に至ると、費用も時間も一気に膨らみます。
そのほかにも、次のような不都合が起こり得ます。
- 売却できないため、固定資産税・都市計画税だけを払い続けることになる
- 建物が傷み、雨漏りや外壁の劣化が進んで価格が下がる
- 空き家のまま放置され、管理不全空家等として自治体の指導対象になる可能性がある
- 相続人の誰かが借金を負うと、その持分が差押えを受けるおそれがある
- 認知症などで判断能力が低下した相続人が出ると、成年後見の手続きが必要になる
建物の傷みは価格に直結します。
特に世田谷区のように土地の価値が大きいエリアでは、建物の状態次第で「古家付き土地」としての売り方に切り替える判断も出てきます。
詳しくは築40年・50年の古い家は世田谷区で売れる?や世田谷区で雨漏りする家は売れる?修繕せず売却もあわせてご覧ください。
放置で一番つらいのは、関わる人が増えて話し合いそのものが難しくなることです。
今が一番相続人の少ないタイミングだと考えていただくとよいと思います。
相続登記の流れと必要書類・費用の目安
手続きは大きく4つのステップに分かれます。
全体像を掴んでおくと、どこで詰まりやすいかも見えてきます。
1. 相続人を確定する(戸籍集め)
亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を集め、法定相続人が誰かを確定します。
本籍地が何度も変わっている場合は各自治体へ請求するため、ここに一番時間がかかります。
あわせて相続人全員の戸籍謄本・住民票も必要です。
2. 遺言書の有無を確認する
公正証書遺言があれば公証役場で検索できます。
自筆証書遺言が見つかった場合は、法務局の保管制度を利用していない限り家庭裁判所での検認が必要です。
封を勝手に開けないよう注意してください。
3. 遺産分割協議書を作成する
遺言がない場合は、相続人全員で「誰がこの不動産を取得するか」を決め、遺産分割協議書にまとめます。
全員の署名と実印の押印、印鑑証明書の添付が必要です。
1人でも欠けると成立しません。
4. 法務局へ登記申請する
不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。
世田谷区内の不動産は東京法務局の管轄です。
申請書のほか、固定資産評価証明書、登記事項証明書などを添えます。
費用面では、登録免許税として固定資産税評価額の0.4%がかかります。
司法書士に依頼する場合の報酬は事務所や相続人の人数、不動産の数によって幅があるため、事前に見積もりを取って確認してください。
戸籍謄本や証明書の取得実費も別途かかります。
なお、遺産分割の話し合いがすぐにまとまらない場合には、相続人申告登記という簡易な手続きで、ひとまず登記義務を果たす方法もあります。
ただしこれは「相続人であることを申し出た」記録にとどまり、名義が移るわけではないため、そのままでは売却できません。
売る前提であれば、本来の相続登記まで進める必要があります。
戸籍集めは想像以上に時間がかかることがあります。
売却の予定がある方は、査定と並行して早めに着手されるとスムーズです。
世田谷区で相続不動産を売却したときの価格相場
登記を済ませたあと、実際にいくらで売れるのか。
判断材料として、世田谷区で成立した取引の中央値を見ておきましょう。
売り出し価格(広告に出ている価格)は相場より高めに設定されることが多いため、手取りの目安としては実際に取引が成立した成約価格ベースのほうが現実に近くなります。
また、平均値は一部の高額取引に引っ張られるため、ここでは中央値を用いています。
| 物件種別 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 | 面積の中央値 |
|---|---|---|---|
| 中古マンション | 約5,600万円 | 約93.8万円/㎡ | 約60㎡ |
| 一戸建て(土地建物) | 約8,900万円 | — | 約100㎡ |
| 土地(宅地) | 約9,200万円 | 約80.0万円/㎡ | 約120㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」取引価格情報・成約価格情報(2021〜2025年/世田谷区、18,253件)をもとに作成。
個別価格は立地・築年数・状態により変動します。
一戸建ての中央値が約8,900万円、土地(宅地)が約9,200万円と、金額の規模は大きめです。
相続不動産としては、それだけ登記や分割の話し合いを丁寧に進める価値がある水準だと言えます。
ただし世田谷区は広く、成城・二子玉川周辺のような高額帯のエリアから、駅からバス便となる住宅地まで幅があります。
同じ区内でも駅距離、前面道路の幅員、土地の形状、接道条件によって価格は大きく変わります。
上の数字は区全体をならした目安であり、個別の物件価格はこれとは別に確認が必要です。
中央値はあくまで区全体の目安です。
世田谷区は駅ごとに事情が違いますので、ご自宅の条件に当てはめた確認をおすすめします。
世田谷区の中古マンション価格の推移(2021〜2025年)
「急いで売らないと下がるのでは」と気にされる方もいれば、逆に「もう少し待ったほうがいいのでは」と迷う方もいます。
判断のために、直近の価格の動きも見ておきます。
| 年 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 |
|---|---|---|
| 2021年 | 約5,200万円 | 約85.0万円/㎡ |
| 2022年 | 約5,400万円 | 約90.0万円/㎡ |
| 2023年 | 約5,700万円 | 約96.8万円/㎡ |
| 2024年 | 約5,800万円 | 約100.0万円/㎡ |
| 2025年 | 約6,000万円 | 約103.7万円/㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
2021年の約5,200万円から2025年の約6,000万円まで、中古マンションの中央値は各年で上向きに推移しています。
㎡単価でも約85.0万円/㎡から約103.7万円/㎡へと動いています。
ただし、これは過去の実績であって、今後も同じように動くと保証するものではありません。
相場の動きだけを理由に売却時期を判断するより、相続人の合意が取れているか、建物の傷みが進んでいないか、税制上の特例の適用期限に間に合うか、といった自分側の事情を軸に考えたほうが現実的です。
特に建物は待っている間に劣化するため、待機が有利に働くとは限りません。
相場を待つより、期限のある特例や建物の傷み具合から逆算するほうが後悔が少ない印象です。
焦らず、ただし期限だけは押さえておきましょう。
兄弟で相続した場合の登記方法と、売却しやすい形
兄弟姉妹で実家を相続した場合、登記の仕方には主に2つの選択肢があります。
どちらを選ぶかで、売却時の手間が変わってきます。
ひとつは、相続人全員の共有名義にする方法です。
法定相続分どおりに持分を登記するため、遺産分割協議がまとまらなくても登記自体は可能です。
ただし売却の際は共有者全員が売主となり、契約書への署名押印、本人確認、決済への立会い(または委任状の準備)が全員分必要になります。
1人でも反対すれば売却できません。
もうひとつは、遺産分割協議で代表者1人の単独名義にし、売却後の代金を協議した割合で分ける方法です。
売却手続きはこちらのほうが格段に進めやすくなります。
この換価分割を選ぶ場合は、遺産分割協議書に「売却して代金を各相続人へ○分の○ずつ分配する」旨を明記しておくことが大切です。
記載がないと、代表者から他の兄弟への金銭の移動が贈与とみなされる余地が生じます。
「言い出しにくい」「兄弟の一人が実家に思い入れがあって話が進まない」というのは、よくあることです。
感情の問題を切り離せというのは酷ですが、期限のある手続き(相続登記の3年、相続税の申告期限の10か月、取得費加算の特例など)が絡む点だけは、早めに全員で共有しておくと話がまとまりやすくなります。
兄弟間の分け方については兄弟で相続した世田谷区の実家を売って分けるで詳しく整理しています。
なお、相続放棄をした人は最初から相続人でなかった扱いになるため、登記にも売却にも関与しません。
放棄が絡むケースは相続放棄した家は売れる?世田谷区の空き家の扱いをご確認ください。
共有のままでも売れますが、全員の予定を合わせる手間は想像以上です。
売る方向が固まっているなら、代表者名義にして分ける形も検討してみてください。
相続登記から世田谷区での売却までの進め方
登記と売却準備は、必ずしも順番に一つずつ終わらせる必要はありません。
並行して進められる部分があります。
まず、登記の前でも査定は受けられます。
おおよその価格が分かると、兄弟間で「売る/持ち続ける」を話し合う土台ができ、司法書士費用や税金を差し引いた手取りのイメージも立ちます。
訪問を伴わない机上での査定から始めれば、周囲に知られる心配も少なく済みます。
遠方にお住まいで現地に行きにくい方にも進めやすい方法です。
次に、権利証(登記識別情報)や測量図、建築確認済証、マンションであれば管理規約や修繕積立金の資料など、家の中に残っている書類を探しておきます。
これらは売却時に必要になるもので、家財整理と同時に進めておくと二度手間になりません。
売り方については、仲介と買取という2つの選択肢があります。
仲介は市場で買主を探すため相場に近い価格が期待できる一方、時間がかかります。
買取は不動産会社が直接購入するため早く現金化でき、周囲に知られにくいという利点がありますが、価格は仲介より低くなるのが一般的です。
「早さ・知られにくさ」と「価格」は完全には両立しません。
この違いは仲介と買取どっちがいい?世田谷区で現金化するで比較しています。
また、親が施設に入居していて実家が空き家になっているケースでは、まだ相続が発生していない段階での判断が必要になります。
その場合は親が施設入居|世田谷区の空き家を売るタイミングもあわせてご覧ください。
登記が終わってからでないと相談できない、ということはありません。
価格の目安を先に知っておくと、ご家族の話し合いも進めやすくなります。
世田谷区の相続登記と売却に関するよくある質問
Q 亡くなった親の名義のままでも、買主が見つかれば売れますか?
A 売れません。
売買による所有権移転登記は、登記名義人から買主へ行うもので、登記手続きが実行できず、買主の住宅ローンも実行されないため、契約が成立しません。
相続登記が売却の前提になります。
Q 相続登記はいつまでにすればいいですか?
A 相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内です。
2024年4月1日から義務化され、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となります。
義務化前に発生した相続も対象になり得るため、古い相続を抱えている方は確認をおすすめします。
Q 自分で相続登記をすることはできますか?
A 相続人が少なく、遺産分割の争いもなく、不動産が1件だけといった単純なケースであれば、ご自身で法務局へ申請することも可能です。
ただし戸籍が何代にもわたる場合、相続人が多い場合、数次相続が絡む場合などは専門的な判断が必要になるため、司法書士へ相談されるほうが確実です。
Q 兄弟の1人が売却に反対しています。
どうすればいいですか?
A 共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ売却できません。
まずは維持にかかる固定資産税や管理費用、建物の劣化といった実際の負担を数字で共有し、話し合いを重ねることになります。
それでもまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停という手段があります。
Q 相続登記にはどのくらい費用がかかりますか?
A 登録免許税として固定資産税評価額の0.4%がかかります。
これに戸籍謄本などの取得実費と、司法書士へ依頼する場合の報酬が加わります。
報酬額は相続人の人数や不動産の数によって変わるため、事前に見積もりを取って確認してください。
Q 遺産分割の話し合いが長引きそうですが、義務違反になりませんか?
A 話し合いがまとまらない場合には、相続人申告登記という簡易な手続きで登記義務を果たす方法があります。
ただしこれは相続人であることを申し出る制度で、名義が移るわけではないため、そのままでは売却できません。
売却するには本来の相続登記が必要です。
Q 世田谷区の実家が古い家でも売れますか?
A 世田谷区は住宅地としての土地需要が厚く、建物が古くても土地としての評価で取引されるケースがあります。
土地(宅地)の取引価格の中央値は約9,200万円(2021〜2025年)です。
ただし個別の価格は駅距離・接道・形状などで大きく変わるため、物件ごとの確認が必要です。
Q 遠方に住んでいますが、登記や売却を進められますか?
A 戸籍謄本は郵送での請求が可能で、登記申請も司法書士へ委任できます。
売却についても、机上での査定から始めれば現地に行かずに価格の目安を把握できます。
契約や決済の段階では立会いや書類のやり取りが必要になりますが、進め方は事前に調整できます。
世田谷区の相続不動産を売るために、まず確認したいこと
相続した不動産は、亡くなった方の名義のままでは売却できません。
売るには相続登記が前提であり、2024年4月からは3年以内の申請が義務化され、怠れば10万円以下の過料の対象にもなります。
放置している間に相続人が増え、建物も傷んでいくため、早めに動くほど手続きは軽く済みます。
一方で、世田谷区の取引価格の中央値は一戸建てで約8,900万円、土地(宅地)で約9,200万円(2021〜2025年・18,253件)と、金額の規模は大きいエリアです。
中古マンションも2021年の約5,200万円から2025年の約6,000万円へと推移してきました。
手続きの手間をかける価値は十分にある水準だと言えます。
次の一歩としては、①登記事項証明書で現在の名義がどうなっているかを確認する、②戸籍の収集に着手する、③並行して机上での査定を受け、価格の目安を家族で共有する——この3つから始めるとスムーズです。
特に②と③は同時に進められます。
状況別の詳しい進め方は、世田谷区で相続した不動産を売却する方法、相続した実家を世田谷区で売りたい|空き家対策、兄弟で相続した世田谷区の実家を売って分けるもあわせてご覧ください。
まずは登記簿で名義を確認するだけでも状況がはっきりします。
手続きが重なる時期ですので、できるところから一つずつで大丈夫です。
