世田谷区の借地権・底地を売りたい|交渉と相場
「親から相続した家が借地の上に建っている。
これって売れるのだろうか」「先代から底地だけを持っているけれど、地代は据え置きのままで扱いに困っている」——世田谷区のように古くから住宅地として成熟したエリアでは、借地権(土地を借りて建物を所有している権利)と底地(借地権が付いた土地の所有権)に関するご相談が今も少なくありません。
結論から言えば、借地権も底地も売買できる財産です。
ただし、どちらも「単独では買い手が限られる」という共通の弱点があり、契約内容の確認、地主または借地人との調整、そして価格の考え方を先に押さえておくかどうかで、手取りもかかる期間も変わってきます。
感情的にもつれてから動き出すと、選べる手段が減ってしまうのが実情です。
この記事では、世田谷区の成約データ(2021〜2025年)をもとに、借地権・底地の価格がどう決まるのか、地主の承諾や譲渡承諾料はどう扱われるのか、底地の売主が取れる選択肢は何か、そして売却の流れと費用・税金までを順に整理します。
まずは情報だけ知りたい、という段階の方にも読める内容にしています。
記事監修者情報

株式会社グランクルー
代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上宅地建物取引士
世田谷エリアを中心に不動産売却の実績500件以上。査定から引渡しまでの一連の実務に加え、相続・住み替え・離婚に伴う売却など、事情の異なる売主それぞれの相談に幅広く対応し、売却実務に多くの知見を持つ。
世田谷区の借地権・底地とは?売主が最初に確認する権利関係
借地権とは、地代を払って他人の土地を借り、その上に自分の建物を所有している権利です。
反対に底地とは、その借地権が付いたままの土地所有権のこと。
ひとつの土地に「使う権利」と「所有する権利」が分かれている状態で、世田谷区でも三軒茶屋・下北沢周辺、経堂、烏山、成城といった戦前・戦後から住宅地として発展した地域に、こうした土地が点在しています。
売却の前に大切です確認したいのは次の3点です。
ひとつ目は契約の種類。
借地借家法が施行された平成4年8月1日より前に設定された借地は旧法(借地法)が適用され、それ以降は借地借家法が適用されます。
旧法の借地は更新が認められやすく、権利として安定している一方、新法の定期借地権(一般定期借地権など)は期間満了で土地を返す前提のため、評価はまったく違います。
ふたつ目は登記の有無です。
借地権が登記されているか、建物の登記だけで対抗要件を備えているのかで、買主側の安心感が変わります。
三つ目は契約書の実物があるか。
世田谷区の古い借地では、契約書が見つからず、地代の領収書だけが残っているケースもあります。
この場合はまず地主と事実関係を確認し、必要に応じて契約内容を書面化することから始めます。
契約書が見つからないまま話を進めると、後で条件がひっくり返ることがあります。
まずは書類探しから、が遠回りに見えて一番早い道です。
世田谷区の借地権・底地の売却相場はどう決まる
借地権と底地の価格は、「所有権(完全な土地)としての価値」をベースに、それを借地権割合と底地割合で分け合うという考え方が基本です。
したがって最初にすべきは、その土地が所有権だったらいくらか、という水準を把握することです。
世田谷区の実際の成約データを見ておきましょう。
| 物件種別 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 | 面積の中央値 |
|---|---|---|---|
| 中古マンション | 約5,600万円 | 約93.8万円/㎡ | 約60㎡ |
| 一戸建て(土地建物) | 約8,900万円 | — | 約100㎡ |
| 土地(宅地) | 約9,200万円 | 約80.0万円/㎡ | 約120㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」取引価格情報・成約価格情報(2021〜2025年/世田谷区、18,253件)をもとに作成。
個別価格は立地・築年数・状態により変動します。
世田谷区の土地(宅地)は中央値で約9,200万円、㎡単価は約80.0万円/㎡です。
これは所有権の土地の成約水準であり、借地権や底地はここから権利の割り振りを行うため、同じ面積でも金額は下がります。
どの割合で分けるかは、国税庁が公表する路線価図に記号で示された「借地権割合」が実務上の出発点になります。
世田谷区内でも路線ごとに割合が異なるため、対象地の前面道路の路線価図を大切です確認してください。
ただし、路線価ベースの理論値がそのまま成約価格になるとは限りません。
借地権の売買では、①地主の承諾が得られるか ②残存期間と更新の見込み ③地代・更新料の水準 ④建物の状態 が価格を上下させます。
底地の売買では、⑤借地人が買い取る意思を持っているか ⑥地代が現在の相場に見合っているか が大きく効きます。
借地人が購入希望であれば、第三者に売るより高くまとまることも珍しくありません。
路線価から出した割合は「目安」です。
実際の値は地代と残存期間で動くので、机上の数字だけで判断しないほうが安全です。
世田谷区の価格動向と借地権売却のタイミング
借地権・底地の評価はベースとなる土地の価格に連動します。
そこで、区内の価格が近年どう動いてきたかを中古マンションの中央値で見ておきます。
| 年 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 |
|---|---|---|
| 2021年 | 約5,200万円 | 約85.0万円/㎡ |
| 2022年 | 約5,400万円 | 約90.0万円/㎡ |
| 2023年 | 約5,700万円 | 約96.8万円/㎡ |
| 2024年 | 約5,800万円 | 約100.0万円/㎡ |
| 2025年 | 約6,000万円 | 約103.7万円/㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
中央値は2021年の約5,200万円から2025年の約6,000万円へと推移しており、区内の不動産価格は上向きの局面が続いてきたと読み取れます。
地価が底堅い局面は、借地権にとっては売却時の評価が取りやすい環境であり、底地にとっても借地人・投資家の双方が検討しやすい環境です。
ただし、これは過去の実績であって将来を保証するものではありません。
むしろ借地権・底地でタイミングを左右するのは、市況よりも権利者側の事情です。
相続が発生して当事者が増える前、借地上の建物がまだ使える状態のうち、地主・借地人と話ができる関係が続いているうちに動いたほうが、選べる手段は多く残ります。
逆に、当事者の高齢化や代替わりが進んでから交渉を始めると、合意形成に時間がかかりがちです。
借地・底地は相手方の代替わりで一気に難しくなります。
市況を待つより、話ができる今のうちに整えるほうが現実的です。
借地権を売るときに必要な地主の承諾と譲渡承諾料
借地権(賃借権)を第三者へ譲渡するには、原則として地主(賃貸人)の承諾が必要です。
無断で売買契約を進めると、契約解除を主張されるおそれもあるため、順序としては「売却の意向を地主へ伝える → 譲渡承諾の可否と条件を確認する → 買主を探す」が安全です。
地主に話を持ち出しづらい、長年の関係を壊したくないと感じる方は少なくありませんが、承諾の話を飛ばして進める方がトラブルになりやすいのが実情です。
承諾の際には譲渡承諾料(名義書換料)を求められるのが一般的です。
金額は契約書の定めや当事者の協議で決まり、地域や個別事情によって幅があります。
金額の目安を口約束のままにせず、書面で条件を確定させてください。
あわせて、建物の増改築に承諾が必要な条項、更新料の取り扱い、地代の見直し時期なども同時に確認しておくと、買主への説明がスムーズになります。
地主がどうしても承諾しない場合、借地借家法には裁判所に承諾の代わりの許可を求める手続き(借地非訟)が定められています。
ただし時間と費用がかかるため、まずは条件面での歩み寄りを探るのが現実的です。
もうひとつの現実的な解決策は、地主に借地権を買い取ってもらう、あるいは地主と共同で所有権として同時に売る方法。
後者は借地権と底地を合わせて完全な所有権にできるため、買主層が一気に広がり、条件がまとまりやすくなります。
地主さんとの同時売却は、双方の手取りが増えやすい方法です。
切り出し方に迷うようなら、専門家を交えた話し合いをご検討ください。
底地を売りたい地主が選べる4つの方法
底地は、地代収入はあるものの自分では使えず、売ろうとしても一般の実需の買主は付きにくい資産です。
世田谷区の地主の方が取れる選択肢は、おおむね次の4つに整理できます。
①借地人に売る:借地人が底地を買えば完全な所有権になるため、借地人にとってメリットが大きく、価格もまとまりやすい方法です。
まず打診すべき相手といえます。
②借地人から借地権を買い取る:逆方向の解決。
所有権に戻してから市場で売れば、前掲の土地相場(中央値 約9,200万円、㎡単価 約80.0万円/㎡)に近い水準を狙える
一方、買い取り資金が必要です。
③借地権と底地を等価交換して分割する:一定の面積があり、分割後も各区画が使える形状であれば、権利割合に応じて土地を分け合い、それぞれ所有権として処分する方法があります。
ただし分割後の間口や形状によっては、旗竿地や狭小地になって価値が落ちることもあるため、事前検討が必須です(→旗竿地・変形地は売れる?世田谷区の売却のコツ/世田谷区の狭小地を売却するには|需要と価格)。
④底地専門の買主(投資家・買取業者)に売る:借地人と交渉せずに現金化できる反面、価格は所有権としての水準より低くなります。
相続税の納付期限が迫っているなど、期限が決まっている場合の選択肢です(→仲介と買取どっちがいい?世田谷区で現金化する)。
底地は「借地人さんに一度打診する」だけで結論が変わることがあります。
業者買取を先に決めてしまう前に確認したいところです。
世田谷区で借地権・底地を売る前に確認する契約書・境界・建物
借地・底地の取引は、権利の内容を書面で説明できるかどうかが成否を分けます。
売却前に揃えたい情報は次のとおりです。
契約関係:借地契約書、直近の地代の額と支払状況、更新の履歴と更新料、譲渡・増改築に関する条項。
旧法か新法かの区分も明記しておきます。
土地の範囲:借地部分の実測面積と境界。
古い借地では、契約面積と実際に使っている範囲がずれている例、隣地との境界標が失われている例があります。
買主から測量を求められることも多いため、早めに状況を確認してください(→世田谷区で境界未確定の土地を売る|測量の要否)。
建物の状態:借地上の建物は築年数が古いものが多く、現行の建築基準を満たさない、あるいは接道の関係で建て替えが難しい場合があります。
この点は買主の資金計画(住宅ローンの可否)に直結します(→再建築不可の物件を世田谷区で売る|買取の選択/築40年・50年の古い家は世田谷区で売れる?/世田谷区で雨漏りする家は売れる?修繕せず売却)。
名義:相続後に登記が済んでいない、兄弟の共有になっているケースは、売却前に整理が必要です(→共有名義の世田谷区の不動産、持分だけ売れる?)。
売却の流れは、①資料収集と権利の確認 → ②価格の目安の把握(机上査定) → ③地主または借地人への打診・条件協議 → ④承諾条件の書面化 → ⑤買主募集・売買契約 → ⑥決済・引渡し、が基本形です。
費用面では仲介手数料、承諾料や名義書換料、測量費、建物解体費(更地渡しの場合)、登記費用、印紙税などがかかります。
税金は譲渡所得として課税され、所有期間の長短で税率区分が変わるほか、相続した不動産に使える特例もあります。
適用の可否は個別事情で異なるため、国税庁の資料と税理士への確認をおすすめします。
借地権付き建物はローン審査が通りにくい場合があります。
買主の資金計画まで想定して条件を組むと、契約後の解約を防げます。
世田谷区の借地権・底地売却に関するよくある質問
Q 地主の承諾がないと借地権は売れませんか?
A 賃借権の借地の場合、譲渡には原則として地主の承諾が必要です。
承諾が得られないときは、借地借家法に基づき裁判所に許可を求める手続き(借地非訟)もありますが、時間と費用がかかります。
まずは条件面の協議から始めるのが現実的です。
Q 借地権の価格はどうやって調べればいいですか?
A まず所有権としての土地価格の水準を把握し、そこに国税庁の路線価図に示された借地権割合を当てて理論値を出すのが出発点です。
世田谷区の土地(宅地)の成約中央値は約9,200万円、㎡単価は約80.0万円/㎡(2021〜2025年)ですので、対象地の前面道路の路線価とあわせて確認してください。
Q 底地だけを売ると安くなると聞きました。
本当ですか?
A 底地は自分で使えず、買主が限られるため、所有権としての土地価格より低い水準になる傾向があります。
一方で、借地人が買い取る場合は完全な所有権になるメリットがあるため、条件がまとまりやすくなります。
Q 借地権と底地を一緒に売ることはできますか?
A できます。
地主と借地人が合意して同時に売却すれば、買主は完全な所有権を取得できるため買主層が広がります。
それぞれが単独で売るより条件が整いやすい方法のひとつです。
配分の取り決めを先に書面化しておくことが大切です。
Q 契約書が見つかりません。
売却できますか?
A 地代の領収書、固定資産税の課税状況、建物の登記など残っている資料から事実関係を確認し、地主と現在の契約内容を確認・書面化していく流れになります。
買主への説明ができる状態に整えることが前提です。
Q 相続した借地権も同じように売れますか?
A 相続による承継は譲渡ではないため、原則として地主の承諾は不要ですが、名義の届け出や登記の整理は必要です。
その後に第三者へ売却する段階では、通常どおり承諾の確認が必要になります。
Q 借地権付きの家は住宅ローンが使えますか?
A 金融機関によって取り扱いが異なり、地主の承諾書(抵当権設定の承諾など)を求められる場合があります。
買主の資金調達が難しいと成約に至らないため、売り出し前に想定される条件を確認しておくと安心です。
世田谷区の借地権・底地売却で押さえるべきポイント
世田谷区の土地(宅地)の成約中央値は約9,200万円、㎡単価は約80.0万円/㎡(2021〜2025年・18,253件のデータより)。
借地権・底地の価格は、この所有権としての水準を借地権割合と底地割合で分け合うところから検討が始まります。
そして最終的な金額を動かすのは、契約の種類(旧法か新法か)、残存期間、地代の水準、そして相手方との合意の取れ方です。
次の一歩としては、①借地契約書と地代の記録を探して手元にまとめる ②対象地の前面道路の路線価と借地権割合を国税庁の路線価図で確認する ③所有権に戻した場合・単独で売る場合の両方で価格の目安を出してもらう、の3点から始めるのが現実的です。
地主・借地人へ話を持ち出す前に、数字の見通しを持っておくと交渉が落ち着いて進みます。
あわせて、境界未確定の土地の売却と測量の要否、共有名義・持分の扱い、仲介と買取の比較もご確認ください。
借地・底地は、これらの論点が同時に絡むことが多い分野です。
売る・売らないを決める前に、価格の見通しだけ確認しておく方も多いです。
書類が揃っていない段階でもご相談いただけます。
参考・出典
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(取引価格情報・成約価格情報/2021〜2025年・世田谷区)
- 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(借地権割合の確認)
- 国税庁「譲渡所得(土地・建物などを譲渡した場合)」
- 借地借家法(e-Gov 法令検索)
- 宅地建物取引業法(e-Gov 法令検索)
- 世田谷区 公式ホームページ
