世田谷区で境界未確定の土地を売る|測量の要否
「土地を売ろうと相談したら、『境界が確定していないので測量が必要です』と言われた」——世田谷区で親から受け継いだ土地や長く住んだ自宅を売るとき、この一言でつまずく方は少なくありません。
境界標が見つからない、ブロック塀がどちらのものか分からない、隣家との話し合いを持ち出しにくい。
測量にどれくらい時間と費用がかかるのかも分からず、話が止まってしまいがちです。
結論から整理すると、境界が未確定のままでも売買契約は成立しえます。
ただし実務では、買主側から境界確定(確定測量)を求められるケースが多く、対応しないまま進めると価格や引き渡し後の責任に影響します。
世田谷区は古くからの住宅地で敷地が細かく分かれた区域が多く、数十センチの差が金額に響きやすい地域でもあります。
この記事では、世田谷区で境界未確定の土地を売る場合に測量が必要かどうかの判断軸、確定測量と現況測量の違い、隣地・区道との境界確定の手順、測量をしないで売る選択肢とその代償を、国土交通省の公的データと法令の枠組みにもとづいて整理します。
記事監修者情報

株式会社グランクルー
代表取締役 加瀬 健史(カセ タケシ)
不動産業界歴20年以上宅地建物取引士
世田谷エリアを中心に不動産売却の実績500件以上。査定から引渡しまでの一連の実務に加え、相続・住み替え・離婚に伴う売却など、事情の異なる売主それぞれの相談に幅広く対応し、売却実務に多くの知見を持つ。
世田谷区で境界未確定の土地は売れるのか
境界が未確定であることは、売買を法律上禁じる事由ではありません。
登記されている土地であれば、境界標がなくても、隣地との筆界確認書がなくても、当事者が合意すれば売買契約は結べます。
実際、相続した土地で境界標が失われているケースは珍しくありません。
問題は「売れるかどうか」ではなく「どう売ることになるか」です。
土地の売買契約書には、売主が引き渡しまでに隣地との境界を現地で明示する旨の条項(境界明示条項)が置かれるのが一般的で、これに応じられない場合は、①境界非明示を前提に価格や条件を調整する、②買主側で確定測量を行う前提にする、③引き渡し後に境界トラブルが起きた場合の責任範囲を契約で切り分ける、といった調整が必要になります。
また、宅地建物取引業法にもとづく重要事項説明では、対象地の状況について買主に説明が行われます。
境界が未確定であること、越境物があることを伏せたまま進めると、引き渡し後に契約不適合責任(民法)を問われる余地が残ります。
隠すより、先に把握して開示条件を整えるほうが結果的に安全です。
世田谷区では、幅の狭い道路に接する土地、路地状部分をもつ旗竿地、細分化された狭小地が多く見られます。
こうした土地では境界の位置が建築可否や有効面積の判断に直結するため、買主が確定測量を強く求める傾向があります。
土地の形状に不安がある方は旗竿地・変形地は売れる?世田谷区の売却のコツや世田谷区の狭小地を売却するには|需要と価格もあわせてご確認ください。
境界の不明確さは「売れない理由」ではなく「条件を決める論点」です。
まず現地に境界標が残っているかの確認から始めましょう。
確定測量と現況測量の違い|世田谷区の土地売却で必要な測量はどれか
「測量」とひとくちに言っても内容は異なります。
売却で意味を持つのは主に次の3種類です。
境界確定測量(確定測量)
土地家屋調査士が登記記録・地積測量図・過去の資料と現地の状況を照らし合わせて筆界の位置を判断し、隣接地の所有者や道路管理者の立会いと確認を経て境界を確定させるものです。
隣地所有者から筆界確認書(境界確認書)を取得し、境界標を設置し、確定測量図を作成します。
売却で「境界を明示する」という場合は通常これを指します。
現況測量
塀・建物・構造物など現地に見えるものを測るだけの測量です。
おおよその形状や面積の把握には役立ちますが、隣地の同意を得ていないため、境界を確定させる効力はありません。
査定段階での参考資料にとどまります。
地積更正登記・分筆登記に伴う測量
登記上の面積が実測と異なる場合の地積更正登記、土地を分けて売る場合の分筆登記では、確定測量が前提になります。
一部だけ売る、隣地に一部を譲る、といった進め方をするなら測量は避けられません。
費用は、面積、境界点の数、隣接する土地の数、道路との境界(官民境界)が絡むか、資料の残り具合によって大きく変わります。
相場を一律に示すのは適切ではないため、土地家屋調査士や不動産会社を通じて複数の見積もりを取り、内訳(立会い費用、登記費用、境界標設置費用など)を比べて判断してください。
見積もりを比べるときは金額だけでなく、隣地の立会い調整や境界標設置まで含むかをしっかり確認してください。
範囲が違うと単純比較になりません。
世田谷区の土地売却で測量が必要になるケース・不要なケース
測量の要否は物件の事情で変わります。
判断の目安を整理します。
測量をしたほうがよい(求められやすい)ケース
- 境界標が現地に見当たらず、地積測量図も法務局に備え付けられていない
- 塀や擁壁、屋根の一部、樹木、給排水管などが隣地との間で越境している疑いがある
- 登記上の面積と現況の広さが合っていないと見込まれる
- 分筆して一部だけ売る、あるいは土地の一部を隣地と交換する
- 幅の狭い道路に接し、道路後退(セットバック)の範囲を確定させる必要がある
- 1㎡あたりの単価が高く、わずかな面積差が金額に直結する
測量なしで進める余地があるケース
- 比較的新しい分譲地などで、近年作成された地積測量図と現地の境界標が一致している
- 建物付きで解体前提ではなく、現況のまま引き渡す条件で買主が了解している
- 買取など、事業者が自ら調査してリスクを引き受ける形で買い受ける
世田谷区でも、二子玉川・用賀・成城など区画が整えられた住宅地では資料が残っていることが比較的多く、一方で三軒茶屋・下北沢・経堂・松原周辺のように早い時期から市街化し敷地が細分化された区域では、境界標が失われていたり塀の位置が曖昧になっていたりする土地が見られます。
まずは法務局で地積測量図・公図・登記事項証明書を取得し、現地で境界標を探すところから始めるのが実務的です。
コンクリート杭や金属プレートが植栽やアスファルトの下に隠れていることもあります。
見つからないと決めつける前に一度確認を。
世田谷区の土地・住宅の価格水準から測量コストを判断する
測量にかけた手間が価格に見合うかを考えるには、その土地がどの程度の水準で取引されているかを知る必要があります。
世田谷区で実際に成約した価格の中央値は次のとおりです。
| 物件種別 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 | 面積の中央値 |
|---|---|---|---|
| 中古マンション | 約5,600万円 | 約93.8万円/㎡ | 約60㎡ |
| 一戸建て(土地建物) | 約8,900万円 | — | 約100㎡ |
| 土地(宅地) | 約9,200万円 | 約80.0万円/㎡ | 約120㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」取引価格情報・成約価格情報(2021〜2025年/世田谷区、18,253件)をもとに作成。
個別価格は立地・築年数・状態により変動します。
ここで使っているのは売り出し価格(広告に出ていた希望価格)ではなく、実際に取引が成立した成約価格です。
売り出し価格は相場より高めに設定されることが多いため、手取りの目安を考えるなら成約ベースのほうが現実的です。
また平均値ではなく中央値を採っています。
世田谷区のように高額取引が混ざる地域では、平均値は一部の突出した事例に引っ張られやすく、中央値のほうが実感に近い数字になります。
土地(宅地)の参考㎡単価は約80.0万円/㎡です。
この水準では、境界の位置が数十センチずれるだけでも金額の評価に影響しうるということになります。
測量費用の一般的な相場をここで示すことは避けますが、「面積が確定していない」ことによる価格の引き下げや値引き交渉の余地と、測量にかかる実費を並べて比較する視点が重要です。
市況の方向も判断材料になります。
区内の中古マンションの中央値は次のように推移しています。
| 年 | 価格の中央値 | 参考㎡単価 |
|---|---|---|
| 2021年 | 約5,200万円 | 約85.0万円/㎡ |
| 2022年 | 約5,400万円 | 約90.0万円/㎡ |
| 2023年 | 約5,700万円 | 約96.8万円/㎡ |
| 2024年 | 約5,800万円 | 約100.0万円/㎡ |
| 2025年 | 約6,000万円 | 約103.7万円/㎡ |
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(2021〜2025年/世田谷区・中古マンション)をもとに作成。
中古マンションの中央値は2021年の約5,200万円から2025年の約6,000万円へと推移しています。
市況が落ち着いている局面では、境界確定に数か月かけても条件を整えたうえで売る意義は小さくないと考えられます。
一方、期限が決まっている売却では、時間を優先する判断もありえます。
単価が高いエリアほど、面積の不確かさが価格交渉の材料にされやすい傾向があります。
数字を確定させる価値は考えておきたいところです。
世田谷区で境界を確定させる手順と期間の目安
境界確定測量は、おおむね次の流れで進みます。
資料調査
法務局で登記事項証明書・公図・地積測量図、必要に応じて旧図面を取得。区の道路台帳など公共図面も確認します。
現況測量・筆界の推定
土地家屋調査士が現地を測り、資料と照合して筆界の位置を判断します。
隣接地所有者への説明と立会い
隣地の所有者に趣旨を説明し、現地で立会いのうえ境界点を確認します。同意が得られれば筆界確認書を取り交わします。
官民境界の確定
接する道路が区道など公道の場合は、道路管理者に境界確定の申請を行い、立会いのうえ境界を決めます。申請から確定まで一定の期間を要します。
境界標の設置と成果図の作成
確定した点に境界標を設置し、確定測量図を作成します。必要に応じて地積更正登記・分筆登記を行います。
期間は、隣接地の数、所有者の所在の把握しやすさ、公道が絡むかどうかで大きく変わります。
隣地が相続未登記で所有者が確定していない、遠方に住んでいて立会い日程が合わない、といった事情があると長引きます。
売却スケジュールを立てるときは、この調整期間を織り込んでおくことが大切です。
なお、隣地に測量の相談を持ちかけること自体をためらう方もいます。
しかし境界の確認は、隣地側にとっても自分の敷地の範囲がはっきりするという意味を持ちます。
境界標の設置や確認書の取り交わしは、後々の紛争を防ぐための実務であり、後ろめたいことではありません。
切り出しづらい場合は、土地家屋調査士や不動産会社が説明に同行する形をとることもできます。
公道との境界確定は行政の手続きが入るため日数がかかります。
売却時期が決まっている方は、早めに着手しておくと安心です。
越境・境界の争いがあるときの解決手段
立会いをしても隣地の合意が得られない、越境物の扱いで折り合わない、というケースもあります。
その場合の選択肢を整理します。
越境覚書を取り交わす:塀や屋根、樹木、配管などが越境している場合、直ちに撤去せず、建替え時に是正する旨を書面で確認する方法です。
買主にとっても将来の取扱いが明確になるため、実務でよく用いられます。
筆界特定制度を使う:法務局に申請し、筆界特定登記官が外部専門家の意見を踏まえて筆界の位置を示す制度です。
訴訟に比べて負担が軽く、期間も短い傾向があります(詳細・要件は法務省の案内をご確認ください)。
土地家屋調査士会のADR(境界問題相談センター)を使う:調査士と弁護士が関与する裁判外紛争解決手続で、話し合いによる解決を目指します。
境界確定訴訟:最終手段です。
時間と費用の負担が大きいため、売却スケジュールとの兼ね合いを慎重に考える必要があります。
境界の争いを抱えたままでも、事情を開示して条件を調整すれば売却の道はあります。
老朽化した建物や不具合を含めて現況で引き渡す考え方については、築40年・50年の古い家は世田谷区で売れる?や世田谷区で雨漏りする家は売れる?修繕せず売却も参考になります。
越境は「なくす」より「取扱いを書面で決める」ほうが現実的な場合もあります。
覚書があるだけで買主の判断はしやすくなります。
測量せずに世田谷区の土地を売る選択肢と価格への影響
どうしても測量に踏み込めない事情があるときは、次のような進め方が考えられます。
公簿売買(登記面積を前提とする売買)にする:実測との差が出ても価格を精算しない条件です。
買主が面積差のリスクを負うため、その分を見込んだ価格になりやすい点は理解しておく必要があります。
境界非明示・現況渡しを条件に売る:境界の明示を売主の義務としない代わりに、価格や責任範囲を調整します。
買主が自ら測量する前提になるため、購入検討者の幅は狭まる傾向があります。
不動産会社の買取を利用する:事業者が調査と境界確定を自ら行う前提で買い受ける形です。
売主の手間と時間は軽くなりますが、そのリスク分が価格に反映され、仲介で個人の買主に売る場合より価格は下がりやすくなります。
「手間の少なさ」と「価格」は完全には両立しません。
判断の材料として仲介と買取どっちがいい?世田谷区で現金化するもご覧ください。
なお、権利関係が複雑な土地では、境界より先に整理すべき論点があることもあります。
名義が複数人にまたがる場合は共有名義の世田谷区の不動産、持分だけ売れる?、接道条件に問題がある場合は再建築不可の物件を世田谷区で売る|買取の選択、土地と建物の所有者が違う場合は世田谷区の借地権・底地を売りたい|交渉と相場で扱っています。
測量を省く判断もありえますが、その分は価格や買主の広がりに返ってきます。
両方の見積もりを並べて比べるのが一番です。
境界・測量に関するよくある質問(世田谷区の土地売却)
Q 境界が確定していない土地は、そもそも売買契約を結べますか?
A A. 登記された土地であれば契約は結べます。
ただし売買契約書には境界明示の条項が置かれることが一般的で、明示できない場合は価格や責任範囲の調整、あるいは買主側での測量を前提とした条件設定が必要になります。
Q 測量費用は売主と買主のどちらが負担するのですか?
A A. 法律で決まっているわけではなく、契約の取り決め次第です。
売主が境界を明示して引き渡す条件なら売主負担、境界非明示や現況渡しなら買主が自ら行うのが一般的な整理になります。
売り出し前に方針を決めておくと交渉がぶれません。
Q 測量費用は譲渡所得の計算で経費になりますか?
A A. 売却のために直接要した費用は譲渡費用として控除できる場合があります。
取扱いは費用の性質や時期によって異なるため、国税庁の解説を確認し、判断が難しい場合は税務署または税理士にご相談ください。
Q 隣地の所有者が立会いに応じてくれない場合はどうなりますか?
A A. 筆界確認書が得られないため確定測量として完結しません。
法務局の筆界特定制度や土地家屋調査士会のADRを利用する、あるいは境界非明示を前提に売る条件へ切り替える、といった選択になります。
Q 古い地積測量図があれば、あらためて測量しなくてもよいですか?
A A. 作成年代や作成方法によって精度が異なり、現地の境界標が失われていると位置を再現できないこともあります。
図面の有無だけで判断せず、現地の境界標と照合したうえで土地家屋調査士に確認してもらうのが確実です。
Q 世田谷区で道路に接する部分の境界を決めるには、どこに申請しますか?
A A. 接している道路が区道であれば、道路を管理する世田谷区の担当部署に境界確定の申請を行い、立会いを経て決定します。
国道・都道の場合は各管理者が窓口です。
手続きに一定の期間を要するため、余裕を持って着手してください。
Q 建物を解体してから測量したほうがよいですか?
A A. 建物や塀があると境界標の確認が難しい場合があり、解体後のほうが作業しやすいことはあります。
ただし解体費の負担や、更地にしたことで固定資産税の取扱いが変わる可能性もあるため、売り方を決める前に不動産会社と順序を相談することをおすすめします。
世田谷区で境界未確定の土地を売るときに押さえるポイント
境界が未確定でも売却の道は閉ざされません。
ただし世田谷区の土地(宅地)は参考㎡単価が約80.0万円/㎡、成約価格の中央値が約9,200万円という水準にあり、面積や境界の不確かさが価格交渉の材料になりやすい地域です。
境界を確定させる費用と、確定しないまま売った場合の価格差・引き渡し後のリスクを並べて比べる——これが判断の基本になります。
次の一歩としては、①法務局で登記事項証明書・公図・地積測量図を取得する、②現地で境界標が残っているかを確認する、③その状態を前提に、境界確定して売る場合と現況で売る場合の見込み価格を机上で試算してもらう、の3つを順に進めるのが現実的です。
隣地への切り出し方に迷う段階でも、資料の確認だけなら誰にも知られずに進められます。
あわせて、土地の形状や権利関係に固有の事情がある場合は、旗竿地・変形地は売れる?世田谷区の売却のコツ、世田谷区の狭小地を売却するには|需要と価格、仲介と買取どっちがいい?世田谷区で現金化するも確認して、売り方の選択肢を広げておいてください。
まずは法務局の資料と現地確認だけでも十分な前進です。
測量するかどうかは、その材料が揃ってから決めれば遅くありません。
出典・参考
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(取引価格情報・成約価格情報/2021〜2025年・世田谷区、18,253件)
- 法務省「筆界特定制度」
- 法務局(登記事項証明書・公図・地積測量図の取得)
- 宅地建物取引業法(e-Gov 法令検索)(第35条 重要事項の説明)
- 民法(e-Gov 法令検索)(契約不適合責任・相隣関係)
- 国税庁「譲渡費用となるもの」
- 日本土地家屋調査士会連合会(境界問題相談センター/ADR)
- 世田谷区公式ホームページ(道路との境界確定・狭あい道路に関する手続き)
